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マーク・サビカス博士「コロナ禍におけるキャリア支援」 オンラインインタビュー(後編)

インタビュー

個人

2020.12.2

マーク・サビカス博士は、ナラティブアプローチ・社会構成的キャリア理論で有名な21世紀を代表するキャリアの理論家です。
・オンラインインタビュー日:2020年8月27日 日本時間21:00~
前半では、コロナ禍において浮上する3つの相談テーマについてご意見を頂きました。
前回の記事はこちら
後半では、キャリアカウンセラー・キャリアコンサルタントに向けたメッセージをお聞きしています。ぜひ参考にしてみてください。

サビカス:キャリア支援という専門領域で活動する方々の話に移りましょう。難しく聞こえるかもしれませんが、今こそ、これまで悩んできたことを能動的に乗り越えるべき時だと考えています。この厳しい時代を味方につけるために、一体どんな活動が役立つでしょうか?
最も効果的なキャリア支援は「内省」の支援です。内省を行って、過去を振り返り、過去と未来を「つながり」で考えてみることです。『Power of Pause』(一時休止の効用)という本をご存知でしょうか。カウンセラーと共に1時間立ち止まり、内省することを説いています。今の私たちは1年にわたって休止をしているようなものですね。コロナ禍のせいで、家に留まり、ずっと家で過ごさざるを得ない状況です。この時期に、キャリアの専門家として、自分の人生設計を振り返ってみることをお勧めします。これまでの人生の意味や重要な意味を持つ思い出や過去を振り返り、自分が楽しいと感じたことを思い出してみましょう。
内省とは、過去を振り返り、思い出の中から「今後やってみたいこと」を探すことも含みます。今回、特に考えてみてほしいのは、「余暇」においてやってみたいことです。実はキャリアや職業カウンセラーというのは、仕事以外に余暇をカウンセリングするスキルも持っているのです。ドナルド・スーパー博士の初の著書も余暇カウンセラーの本でした。
恐れから不安に陥り、引きこもるのは危険なことです。在宅を強いられているこの時代に元気でいるために(安全な形で)余暇活動を充実させることが大切だと考えます。
余暇活動をすることで、私たちは「自分らしさ」を保てることがあります。大工仕事やDIYなどの「現実的」な趣味もあるでしょう。新しいことを学ぶという「研究的」な活動や「芸術的」な芸術趣味、「社会的」なボランティア活動なども考えられます。自分が楽しいと思えることをしてください。仕事という収入のある活動を失ったとしても、泣きながらお酒に逃げることがないように、ぜひ余暇活動を活性化させてください。余暇活動には、友人関係も関わってきます。コロナの状況だからと、友人関係を途絶えさせないことが大切です。また、祈りや瞑想もお薦めです。瞑想(マインドフルネス)の方法を学ぶのもよいでしょう。これは本当に優れた手法になります。
続いて、内省についての提案ですが、私の提唱する「キャリアストーリー面談」をやってみてはどうでしょう。ご存知ですか?

「幼い頃にあこがれた人(ヒーロー)は誰でしたか?その人(たち)を説明する形容詞を3つあげてください」~これはあなたのありたい姿を表しています~

退職後にどんなストーリーを描きたいと思っていますか?自分を客観的に見てアドバイスするならどんなことを言いたいですか?この一時休止の時期を使って余暇を豊かにしましょう。新たな趣味を見つけましょう。そしてコミュニティにつながりましょう。内省を活用し、キャリアストーリー面談などの質問をしてみましょう。将来のビジョンを明確にし、物語にするお手伝いをしてください。
たとえ未来が制約だらけでも、余暇の時間には制約されずに自由な自分でいてください。
ここまでお話ししてきた余暇に関するカウンセリングやキャリアストーリーによる方法はキャリア支援者だからこそできることです。オンライン通話を使ったり、自治体や学校にアプローチしたりなど、人生設計と明確化を支援し、自分が信じることを実行してください。ここまでの私の話を聞いて、どう思いましたか?
水野:自分がキャリアストーリー面談を受けた時のことを思い出しました。そして、先生の話を聞いて勇気づけられ、気持ちが明るくなりました。
サビカス:あなたの人生のヒーローはあなた自身です。あなたのヒーローたちは今この時期に何をすると思いますか?考えてみて下さい。昔のあなたのロールモデルを3人思い出してください。有名人でも何でもいいですよ。自分がその人だったら、どんな行動をとるでしょうか?そんなことを考えてみるように促していきましょう。人生のヒーローであるあなたは一時的に役割をひとつ失っても他の役割をなくさないようにしてください。悩みを愛する人やカウンセラーに話して言語化し、勇気を育み、一歩外に出て、「動物」と戦うことです。落ち込んでひきこもったとしても、余暇活動や祈りなどの大切な活動に背を向けないこと。
これが私のメッセージです。
水野:ありがとうございます。私も家族があり、息子がいるので、「仕事以外の役割を失うな」というメッセージがとても心に響きました。
サビカス:コロナ禍において大切なことは強くあり続けることです。自分が強くなければ寛大になれないからです。ぜひ息子さんのためにも強くなってください。弱くなったら寛大さを失いますから。
水野:私は時に心配しすぎてしまい、息子の宿題のことなどうるさく言いすぎてしまいます。そんな時には立ち止まって内省し、心配はやめて息子を信じようと自分に言い聞かせます。
サビカス:心配は不安という「動物」です。信頼は土台です。信頼という土台があれば、年齢相応の自律性や自信を育むことができます。自立、自主性が生まれれば、外の世界に出て何かを築いていけるでしょう。信頼感、自立性、自主性があれば自信を持って世の中に出ていけるでしょう。
水野:そうですね。貴重なお話をありがとうございました。