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キャリこれ

ひとり一人には役割がある。アーティスト・小松美羽氏が語る言葉と“これからのキャリア”の重なり

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2020.12.25

2020年の世界的な変化が訪れている中で「キャリアのこれから研究所」は生まれました。私たちは、これから未来に向かって、働き生きるとき、どんなことを大切にしていくのでしょう。そして、人の生き方・キャリアとはどのように変容していくのでしょう。
2021年1月15日、キャリアのこれから研究所・設立記念イベントを開催します。
冒頭の「人間性の発揮によって生まれる成熟とした社会とは?」という壮大な問いかけを設定しました。この問いかけは、”これからのキャリア”を考えていくときに、きっと指針となるだろうと感じています。
このようなテーマを出したとき、“人間性の発揮”を自らが明確になさっており、それがキャリアに通じている人、その活動が社会に繋がっている人は誰だろうか、と考えたとき、ひとりのアーティストの名前が挙がりました。
「自分が小さい頃に見た夢の実現を、自分が信じている」
幼少期、展覧会で多くの人に見てもらうために絵を描く作業をしている夢を見たこと。その原体験を、自分の在り方・生き方に直結させている人。
そのまっすぐな人間性が「作品」というものに溢れ出ている小松美羽さん。
今回インスピレーションムービーの出演のおひとりとしてご依頼しました。
小松美羽(こまつ みわ)氏プロフィール
1984年長野県生まれ。豊かな自然環境での生き物たちとの触れ合い、その死を間近で看取るという幼少期からの経験が独自の死生観を形成。死の美しさを志向した表現へと至る。
女子美術大学短期大学部在学中に銅版画の制作を開始。近年ではアクリル画、有田焼などに制作領域を拡大。
2014年には出雲大社へ作品を奉納、2015年「チェルシー・フラワー・ショー」(ロンドン)へ有田焼の狛犬作品を出品、受賞作が大英博物館へ収蔵されるという快挙を成し遂げる。
作品はワールド・トレード・センターへ収蔵、2017、2018年台湾、香港、日本での個展は、観客動員数とセールス双方で新記録を樹立。
2019年VR作品『INORI~祈祷~』が第76回ヴェネツィア国際映画祭VR部門、イギリスのレインダンス映画祭にノミネート。2020年日本テレビ「24時間テレビ43」チャリTシャツのデザインを担当。
日本の美術界へ衝撃を与え、国際的な評価は高く、多方面でその存在感を増している。

ひとり一人には役割がある。私は絵を描くということが役割。

(『誰しも龍となる』 2018年 アクリルペイント)
小松さんの作品を見ると圧倒される。これは選ばれし人の作品で、違う世界に住んでいる人なのだと思っていました。
…しかしインタビューを進めていく中で、そんな隔絶したイメージよりも、自身の過去から現在、現在から未来に向かって、ただただ純粋に進んできた小松さんご自身が見え始めてきました。
「最初は絵が売れず、発表できる場もありませんでした。皆が朝出勤するという時間に、私は家の中で絵を描いている。…そのとき自分は社会の役割に入り切れていないという感覚がありました」
朝何かに向かっていく人たちの姿、何かに所属している人たちの姿を見て、すごいなと小松さんは感じたと言っていました。
自分自身が本当に好きなことは絵を描くことだと理解し、作家になるんだという強い想いを携えながら、アルバイトと並行に、実直に絵を描いていた時期がありました。
そんな中で現在小松さんをマネジメントしている株式会社風土の皆さんと出会う巡り合わせがあり、今の活躍へとつながっていきます。
「私は絵を描くことはできるけど、結局それしかできなくて、今の自分をつくってきたものは、関わる他者の皆さんが培ってきたキャリアやノウハウや知識を私に傾けてくれている。だから今があるんですよね」
小松さんの言葉の端々に、私は私であることの肯定と、同じように、あなたはあなたであることを肯定する言葉が続きます。
著書「世界のなかで自分の役割を見つけること」の中でも、「私は特別な、選ばれしものではない。誰もが役割を持っていて、あなたが世界の中の自分の役割に気づき、それを果たす生き方をする」という言葉が挙げられているのですが、自分もあなたもそれぞれに役割がある、というまっすぐな他者へのリスペクトがみえます。
ロンドンの大英博物館に収蔵された有田焼の狛犬作品『天地の守護獣』は、200年以上にわたって技術・生成・絵付け・焼成を継承してきた有田焼第七代目弥左エ門窯(やざえもんがま)の職人の皆さんと共に創り出したものです。この工程には狛犬の原型をつくる型師(型の原型をつくる師)と、実際に磁器をつくり焼いてゆく窯元の職人との連携が必要で、そこから絵付けへと進んでいきます。
(『天地の守護獣』 2016年 有田焼)
「そのプロセスはひとりではできずチームの力である。日本の伝統の力が1つの和となって自分の作品ができあがることに手応えを感じていた」と著書でも小松さんご自身が振り返っておりましたが、関わる他者に対するリスペクトを、行動で、作品を創るプロセスで表出させていたことを思い起こさせました。
自分の役割と一緒に動く人の役割を考え、に創り出すという過程は、キャリア・働く場においても重なるところがあると強く感じました。

アートは薬になりえる。人にとって衣食住と薬は必要。

新型コロナウイルスが拡がった社会の現状をみて、小松さんはどう感じているのかを問いかけてみました。
「私がいま健康で絵を描かせてもらっていることも意味があるのでしょう。絵は魂や心の薬だと認識していて。人は衣食住と薬も必要。絵だけではなく音楽もそうですが、芸術が人の心を救うから」
これまで戦争やウイルスやいろいろなことが歴史上でもありましたが、そこで生き抜いて、そして傷ついてきた人たちに芸術は寄り添うものであるということを伝えてくれました。
「絵でも、音楽でも、自然の作り出す芸術でもいいのです。それを通して自分の守っていきたい純粋な心を、そう思える時間を、アーティストとして創っていきたい、それを使命として思っています」

生きている今。私ができることは何か。

「親から小さいころ『動物の方があなたより年齢が上なのだから尊敬しなさい』と言われたことがあります。自分の朝ご飯を食べる前に、動物たちの朝ご飯を用意するなどお世話をすることが当たり前でした。“人間様”が先ではなかった。」
小松さんのご実家では幼少期多くの小動物と共に暮らしており、動物と人間とが触れ合う日常生活の営みと、やがて訪れる死に向き合うことを経験していました。
その原体験によって、見つめる視線が変わるのだということを感じる言葉が続きます。
「ひとは肉体で判断しがちですが、魂を見たら、ウサギなのか人間なのかわからないと思います。“動物だから人間より命が軽い”ということはないです。動物たちも私たちの家族だったので、人間と同じように『死』に対して敬意をもって死者を弔います。『死』に対して、生きている我々は差別なく向き合っていきたいです」
死と向き合う経験が生活の中に内包されていた、というところから見える小松さんの価値観は、だからこそ「生きている今」に何をするかが明確です。
「今、私が健康で絵を描けていることは意味があるのかもしれない。老いることができる時間をいただけている、ということは意味があるのだと思います」
今私が生きていること。
誰もに等しく訪れる死があるとして、残されている時間、自分ができることは何か。
それは働く場にいる私たちも同様です。
今いるこの組織で、この場所で、私ができることは何か。
―何のために働いているのか。
働くに自分らしさを求めるとき、その“何のために”が明確になっていくのだと思いますが、そこには小松さんのような「今、私が生きている意味」という根源的な問いかけがあるのかもしれません。
2021年1月15日。キャリこれのイベントにて、ぜひ小松さんの「今」をお聞きできるインスピレーションムービーから感じ取っていただきたいです。
■1月15日イベントのお申込みはこちら↓
https://peatix.com/event/1719336