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第4回目キャリTERAレポート 「ジョブ型雇用と今後のキャリア支援のあり方」

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2022.5.25


企業内のキャリア支援者やキャリアコンサルティング資格保有者が情報交換できる場「キャリアコンサルタントのための寺子屋」。第4回目は「ジョブ型雇用と今後のキャリア支援のあり方」と題し、2022年3月22日に開催しました。
今回のゲストは、労働政策研究・研修機構の下村 英雄様。モデレーターは、キャリアのこれから研究所所長兼日本マンパワーフェロー水野 みちです。また、グラフィックレコーディングは、久々江 美都さんに担当いただきました。

ジョブ型雇用とキャリアをテーマとした下村英雄様へのインタビュー連載もぜひあわせてご覧ください!
●ジョブ型雇用とキャリアvol.2 より自由で、より公平なキャリアをめざして
https://future-career-labo.com/2022/03/22/sakai05/


1、ジョブ型雇用とは? 水野みちより

昨今、注目をあつめる「ジョブ型雇用」。ネットやニュースで、この言葉を目にしない日が無いくらいの状況が続いていますが、皆さまの中には、次のような疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
・そもそもジョブ型雇用が脚光を集めている理由や背景は?
・ジョブ型雇用とはどのように定義されるのか、そのメリット、デメリットは?
・この仕組みを導入すれば、いわゆる日本的な雇用システム・労働市場に内在する多くの問題が解決するのか?
これらの問いに対し、まずモデレーターの水野からジョブ型雇用の導入状況・導入理由などの実態を紹介。合わせて、ジョブ型のメリット・デメリットを整理しました。
経団連が2021年に発表した調査によると、ジョブ型雇用を導入済み・検討中の企業は25.2%。
2009年以降は下火となっていたものの、2019年よりに増加傾向にあります。
参考:「2020年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果(経団連)」
https://www.keidanren.or.jp/policy/2021/004.pdf 
同調査によると、ジョブ型導入の主な理由は、以下の通りです。
「専門性を持つ社員の重要性が高まったため(60.2%)」
「仕事・役割・貢献を適正に処遇に反映させるため(59.2%)」
「優秀な人材を定着させるため(54.4%)」
一方、ジョブ型を導入しない理由は、「職務を明確にしにくい(46.4%)」「自社の職務・業態になじまない(43.8%)」などです。
水野:「ジョブ型の導入が進む中、その良さを発揮するには、職務を明確にし、評価制度を見直したり、管理側のパフォーマンスマネジメント能力を高めたりと、組織側も社員側も双方に変革が求められます。この変革の波は、まだまだざわつきが続きそうです。人事の皆様をはじめ、キャリアコンサルタントやキャリア支援者が、個人・組織・社会に対して出来ることは何なのか?どんな活躍が期待されているのか?という問題提起をしつつ、下村様にバトンタッチさせていただきます。」

2、ジョブ型雇用と今後のキャリア支援のあり方

●「本来のジョブ型」と「日本的ジョブ型」のズレ
下村様からはまず、一般的な概念として使われている「本来のジョブ型」と「日本的なジョブ型」のズレについて解説していただきました。
下村氏「本来のジョブ型雇用は、パート・アルバイトの働き方のように『職務が特定された形の雇用』であるのに対し、日本的なジョブ型雇用は、成果主義や人件費抑制のツールとして解釈され導入が進んでいる側面があります。ジョブ型を語る際、このズレを認識しておくことは大切です。」
また、ジョブ型導入には次の3つの社会背景が関係しているため、今後はある程度の必然性を持って導入が進むことが示唆されました。
<ジョブ型導入の社会背景>
①グローバル化の進展:日本は極端なメンバーシップ型雇用であるが、世界的に見るとジョブ型雇用が主流。働き方のグローバル化(平準化・均質化)の中で、日本の雇用制度はジョブ型へ近づいていく。
②職場の人口動態変化:少子高齢化が進むため、まっさらな新卒を採用して、OJTやジョブ・ローテーションで育て上げる育成モデルでは会社が立ち行かない。中途採用の中高年を活用できる職場にしていくことが求められる。
③産業構造の変化・情報化の波:各事業で高度な専門知識が求められるようになり、業務管理を行うジェネラリストのマネージャーではなく、特定の専門性をもつプロフェッショナルが求められるようになっている
さて、ネガティブなイメージで語られることも少なくないジョブ型ですが、実は、働く側にとって望ましい側面もあります。
<働く側にとってのメリット>
①スキルや専門知識が評価されるので、リカレント教育やリスキル施策が機能しやすい。
②ワークライフバランスがとりやすく、より自由な職業生活を選択しやすい。
③同一労働、同一賃金で、労働法の規定どおりのため、働き方の不公平が是正される。
④スキルのある中高年が活躍しやすい社会となり、中高年のスキルを無駄にすることなく有効活用できる。
下村氏 「ジョブ型雇用の導入が進むことで、働く側は、性別・子どもの有無・年齢といった個人の属性に関係なく、自由にキャリアを形成していける可能性が高くなるのです。
一方で、職務に紐づく雇用となるため、専門性の獲得は必須です。狭い領域でもいいので専門性を身に着け、専門性の領域を広げたり深めたりする学習の継続が重要となります」
●キャリア支援者の役割
企業が人事制度をジョブ型雇用へ移行するにあたり、「過渡期においては、働く側への個別支援が重要になる」と下村様は強調します。
下村氏 「というのも、制度変更には時間がかかるため、過渡期に制度の範囲から漏れる人も出てきます。キャリアコンサルティング等で、漏れてしまった各個人を支援し、制度の隙間を埋めていくことが大切になります。」
また、企業内のキャリア支援者は、ジョブ型雇用への移行により、より支援がしやすい環境になるのではないかともお話されました。
下村氏 「本来、キャリア支援というものは、ジョブ型を念頭に置いているんではないかと思います。それを、日本のメンバーシップ型(終身雇用を前提とした会社主導のキャリア)に合うように形を変えて企業に取り入れたのが、日本型の企業内キャリア支援です。そのため、理屈の上ではジョブ型で個人の自由なキャリア形成を支援したいと考えても、メンバーシップ型の企業組織にうまくなじまない面がありました。
例えば、会社を辞めたいと悩む従業員のキャリアコンサルティングをする際に、ジョブ型の視点からは個人の自由なキャリア形成を基盤にして、将来の目標を社外に置いたとしても問題ありません。それを応援した方が良い場合もあります。
しかし、メンバーシップ型の視点からは、単純に企業の外に出してしまって良いのかというジレンマを感じる。そうした企業内のキャリア支援者も少なくないことでしょう。ジョブ型雇用への移行によって、制約やジレンマを感じずに、キャリア支援で十全の力が発揮できるようになるのではないかでしょうか。」
メンバーシップ型とジョブ型の場合とでは、「個人」と「企業」の関係が変わるため、それぞれのキャリア支援の在り方についても変わってくるというお話が新鮮でした。
●ジョブ型雇用では、個人と企業は対等
さらに、下村様からは、ジョブ型雇用では「個人」と「企業」は対等な立場になることにも触れて頂きました。
下村氏 「個人側には、業務を執行するスキル、キャリア形成のための学習継続が求められます。
一方、企業側は、個人の学習の成果を実際に活かす場として職場を提供します。個人は職場で試行錯誤しながら高い生産性を発揮しようとします。企業にとっては、それが好業績をと結びついていきます。この一連のサイクルによって個人と企業は互いに協力して良いキャリア形成を進めていけるのではないでしょうか。」
職場は個人のキャリア形成の機会を提供する場となることが重要であり、それができない職場は、逆に個人の側から選択されなくなるとの提言もありました。

3.参加者との質疑応答

下村様のお話の後、参加者同士の対話の時間や下村様との質疑応答の時間をたっぷりと取りました。その一部もご紹介します。
Q1.スキルのない中高年、または会社に特化したスキルのみを持つ中高年にとって、ジョブ型の導入は格差拡大につながったりしないのでしょうか?
A1.リスキリング(学び直し)をしないと報われないという点では、格差拡大につながる可能性があります。キャリア支援者には、働く側がポータブルスキルの蓄積をできるよう支援する役割が益々求められます。
Q2.非正規雇用に就いていて専門スキル形成の機会が持てず、ジョブ型の枠組みに入れない人もいるのではないかと心配です。
A2.非正規雇用で働く人は、ジョブ型雇用への移行により、報われやすくなる面があると思います。
ジョブ型ではリカレント教育が機能しやすいので、職業訓練を受ければ受けただけ、待遇やポストの面で報われる可能性が高いからです。
しかし一方で、ご質問のような「ジョブ型雇用の枠組みに入れない働き手」というご指摘も、とても大切な問題提起だと思います。こちらは、ソーシャルジャスティス(社会正義)の視点で、目を向けていくべきことかもしれません。
Q3.職務の対価について質問させてください。職務の対価は、市場の原理によって流動性が出てきますし、下村先生のお話にもあったAIやDXの進展によっても変わっていくと思うのですが、働く側の生計維持のため、「同一労働同一賃金」といったような労働政策上の工夫が何か必要だと思われますか。
A3.今まで労働政策で「同一労働同一賃金」の話がよく挙がっていたのは、メンバーシップ型を前提とする社会だったからだと思います。世間相場・外部労働市場と内部労働市場に隔たりがあり、同一賃金が実現されない現状がありました。
しかし、ジョブ型を前提とする社会では、原則的には、世間相場、つまり労働市場の相場通りに社内の賃金も決まっていくので、フェアな対価が実現されると考えています。

4、ゲストプロフィール

独立行政法人 労働政策研究・研修機構 副統括研究員
下村 英雄(しもむら ひでお)氏
筑波大学大学院博士課程心理学研究科修了。博士(心理学)。キャリア心理学、キャリア支援論専攻。1997年より現職。他に日本キャリア教育学会会長、厚生労働省職業能力開発専門調査員、東京成徳大学大学院講師など。主編著に『社会正義のキャリア支援-個人の支援から個を取り巻く社会に広がる支援へ』(図書文化社)、『成人キャリア発達とキャリアガイダンス-成人キャリア・コンサルティングの理論的・実践的・政策的基盤』(労働政策研究・研修機構、平成26年度労働関係図書優秀賞受賞)、『キャリア・コンストラクションワークブック』(金子書房)、『D・E・スーパーの生涯と理論』(図書文化社)、『人を育てる中小企業-現場力の源泉は産業カウンセリングにある』(雇用開発センター)他。国家資格キャリアコンサルタント、1級キャリアコンサルティング技能士。