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連載スタート!「学びのこれから」

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連載記事

2022.9.8

今月より、新たな連載「学びのこれから」が始まります。「ジョブ雇用とキャリア」で行った各回の有識者や実践者の皆さんへのインタビューを通じて見えてきたのが、ビジネスパースンの学びに起こりつつある変化でした。
業種業態を超えて急速に浸透しつつある「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の潮流を背景とした「リスキリング(新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得すること/させること)」の動きは2020年頃より活発化してきましたが、ジョブ型制度の進展によって新たな展開が見えてきました。
「今後の教育体系は、階層別という名前は残していますが、職務型(ジョブ型)に作り直していきます。自律学習という部分では、グローバル標準のビジネススキル、全世界共通のロジカルシンキングやコーチングといったテーマを、グローバル共通軸でジョブに合わせたレベルで用意しています。
これまでは会社として受講してくださいという研修が多かったのですが、これからは自分で決めて選んでください、という考え方に変えていきます。」
これは「ジョブ型雇用とキャリア」でインタビューをさせて頂いたオリンパス株式会社・井川憲一さん(HRプランニング・ディレクター)のコメントです。
■オリンパス株式会社 井川様へのインタビュー記事は、こちら
日本では、長らく「学び」は会社が与えるもの、という考えのもと全社員一律の社員教育が行われてきましたが、今後は自らが描くキャリアの道筋に応じ、必要とされるスキルや能力を自主的にアップデートすることが求められる時代になりそうです。
しかし、それは会社が社員に学びを「丸投げ」することではありません。ジョブ型同様、本年以降の大きなトピックとなりそうな「人的資本経営」の規格となるISO30414には「スキルと能力」という項目があり、企業がどれほど人材育成や能力開発に注力したかを開示することが求められています。これによって、人材育成が明確に経営課題となっていくことでしょう。
日本はこれまで、先進国の中ではダントツに「企業が人材投資を行わない」「企業に所属する社員が自主的に学ばない」国だということが、データで明らかになり通説ともなってきました。しかし、リスキリング、ジョブ型制度や人的資本経営の潮流がこうした流れを変えるかもしれません。
その一方、新たな懸念も生じています。例えば「新たなスキルの獲得」を意味するリスキリングがDXと同義語になっていることです。DXに必要とされる能力に代表される、客観的な評価が可能な「ハードスキル」に対して、定性的で可視化しにくい、しかし仕事を行う上で極めて重要な「ソフトスキル」が置き忘れられているようにも見えます。
そして「どのようなキャリアを歩むのか」の構想を自律的に描くことがこれまで以上に求められるこれからの時代。「正解を導き出す」ことに重きを置いてきた私たち日本人は、いよいよ本質的な「問いを立てる」能力を身に付ける必要性に迫られているようです。
いま話題となっている一冊の本があります。社会学者の上野千鶴子さんによる『情報生産者になる』。
上野さん自身が東京大学・上野ゼミでの学びについて公開されていますが、大きなメッセージは「誰も立てたことのない問いを立てる」ことの意味です。同書が大きな関心を集めている背景には、この「自ら問いを立てる」ことへの問題意識が社会に広まっていることではないでしょうか。
■上野千鶴子さん『情報生産者になる』詳細は、こちら
「学びのこれから」シリーズでは、各界の有識者にインタビューしながら社会人や企業人の学びの潮流を俯瞰するとともに、新たな学びに挑戦される現場のレポートや、これからの働き方やキャリアの道筋を描く上で本質的に考えるべきことを解明していきます。どうかご期待ください。

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