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キャリこれ

シリーズ「営業が聴く」① 「楽しい!」学びはヒトの中に残り、仕事にも活きる -ベーリンガーインゲルハイムの皆さんと振り返る「いけばなワークショップ」-

連載記事

2023.3.23

今日そして次世代にわたり、暮らしを変革する画期的な医薬品や治療法の開発に取り組み、グローバルネットワークで医薬品ビジネスを展開するベーリンガーインゲルハイム。人材育成の点でも、常に果敢にチャレンジされています。先だっては、「いけばなワークショップ(*)」に首都圏営業部の皆さまが参加。創作を楽しむとともに、同社のOur Purposeや行動規範についても考えを深めていただく内容が大好評でした。
(*いけばなワークショップは、日本マンパワー・草月流いけばなが共同開発した研修プログラムです)
本レポートでは、ワークショップの企画から運営まで統括された研修部の田邉さん、現場の統括責任者として場をリードされた金泉さん、そしてご参加いただいた亀井さん・武田さんと一緒に、ワークショップでの学びを振り返ります。
ぜひご一読ください!
■インタビューご参加者
金泉 様(スペシャルティケア事業本部 営業本部 首都圏営業部部長)
亀井 様(同営業部、東京第二ディスクリクトマネージャー)
武田 様(同営業部、東京第一ディスクリクトMR)
田邉 様(同営業本部 研修部部長)
■インタビュアー(聞き手)
(株)日本マンパワー 魯書君 ろしょくん
*ベーリンガーインゲルハイムジャパン様営業担当
■レポート執筆
酒井 章(キャリアのこれから研究所プロデューサー
いけばなワークショップファシリテーター)
1.いけばなワークショップで実施したプログラム
  • ●なぜビジネスにアートが求められているのか
  • ●いけばなデモンストレーション
  • ●個人創作
     「自分がイメージする『チーム』の姿とは?」
  • ●各作品について、いけばな師範からのフィードバック
  • ●グループ対話
  • ●グループでの創作
  • ●いけばな師範から、各作品へのフィードバック
  • ●いけばな師範との対話
  • ●リフレクション
    ワークショップでの気づきをどう日々の業務に活かすか?
*ご参考 いけばなワークショップの効果に関する記事
 https://future-career-labo.com/2021/11/01/ogata09/
2.いけばなワークショップ 印象的だったこと

—まず、ご体験いただいた「いけばなワークショップ」を思い出して、どのようなことがいま、思い浮かんでいますか?
田邉さん(以下敬称略):金泉さんの強烈な作品(作品名「レッドダイヤモンズ」)しか浮かんでこない自分がいますね(笑)。
金泉さん(以下敬称略):いけばなをやったことがなかったので、真っ白な気持ちで取り組むことができました。研修といえばゴールや研修で望まれているものが予測できてしまうものが多くて、それに合わせてしまいがちです。しかし、このワークショップの場合は、本当にまっすぐな、新入社員のような気持ちで取り組むことができたのが、すごく良かったですね。
武田さん(以下敬称略):誰もが初めて体験することなので、自分と他人を比較せずに取り組めました。確かに、何を求められているかを先読みして発言する研修が非常に多い中で、「ねばならない」を考えずに取り組めたのが、私もすごく楽しかったです。
亀井さん(以下敬称略):正解を求めなくて良いので、自由にできるという新鮮さと、一人ひとりが異なる考え方やコンセプトを表現していたので、その多様性を受け容れるということもすごく面白かったですね。
3.いけばなワークショップ 実施前に期待していた効果

—金泉さんと田邉さんにお伺いします。インハウスのワークショップの企画・実施というステップを踏んでいく中で、事前に期待していた効果はどのようなものだったのでしょうか?
金泉:部長職も課長職も一般職も、チーム全員が同じ目線でやったことのない体験を積めるということはすごくいいな、という思いがありました。なので、田邉さんには、全員が参加してこそ意味があるとお伝えし、それを叶えてもらいました。
年齢や役職関係なく、同じ学びを得ることができたのが大きかったと思っています。
田邉:今、多くの研修で「VUCAの時代」と言ってからスタートします。正解がない中でアジャイルに何かをしていかなければいけないんだ、と話すのはいいのですが、では具体的にどんな体験をしてもらって何を考えてもらったら良いのか・・・。研修を提供させていただく立場からすると、その手段がありませんでした。
しかし、いけばなワークショップの体験会に参加した時、VUCAの時代に求められるいくつか大事な要素を体験してもらえる貴重な機会になるのではないか、という期待を感じ、やってみたい!と思いました。それが、私としての今回のワークショップを通じたチャレンジでした。

—御社は、こういった新しい学びのプログラムにどんどんチャレンジされますが、その背景には人材育成の方針などが関係しているのでしょうか?
田邉:弊社は、創業以来100年以上脈々と受け継がれているライトビルト(私たちの存在意義を示すステートメント)英語でいうところのMISSION STATEMENTという企業理念があり、人を大事にするという人材育成の根幹になっています。
そういった人材育成理念のもとで、いつの時代にあっても人が何かに気づく機会や学び取ることができる学習機会を提供してこそ人が育ち、それが企業の力になり、最終的には社会の力になり得る。つまり、「人を育てること」が、自然と企業文化として根づいていると思います。
4.ワークショップ後の気持ちの変化

—「いけばなワークショップをやる」と言われたとき、亀井さんと武田さんはどういう気持ちになりましたか?
武田:そもそも「何で“いけばな”なんだろう?」と思いました。今まで、会社ではたくさんワークショップを受けてきましたが、今回は全く目的が見えないというか・・・何のために“いけばな”なのか全くわからない状態で臨みました。
亀井:私も似たような感じでした。いけばなと研修ってどう結びつくのかな?という、ちょっとした不安な気持ちと、逆に「どんなことをするのかな?」という興味も混ざったような気持ちでした。

—実際に受けてみて、どのような気持ちの変化がありましたか?
武田:イントロダクションで、論理や理性に基づく問題解決に加えて、VUCAの時代になったいま、直感や共感に基づく価値創造が必要で、だからこそビジネスにアートが必要だというお話がありました。確かに分析は重要で求められている一方、私自身がすごく直感を大事にして営業する人間なので、直感や感性を活かすことが今の時代の流れにも沿っているんだ、「私は間違っていないな」と、ちょっとほっとしました。すると、とても楽しい気持ちになりました。

創作に没頭される武田さん

—ワークショップの後に、「直感を大事にする自分が間違っていない、この道を突き進むぞ」という気持ちになったことで、何かMR(Medical Representative:医療情報担当者)としての業務にいかせたことなどありましたか?
武田:新しく配属されてきた新人に対しての向き合い方などで、自分の直感も意識しながらしっかり向き合えたのではないかな、と思います。
また、講演会を企画する仕事のときも、例えば登壇者の人選が顧客のどのようなニーズに基づいているのかなど、論理的に聞かれると困ってしまう場面があって。私の中には、理屈ではなく「それをした方がヒットする」みたいな直感が芽生えることが多いんです。「今、この先生にこの話をしたらヒットする気がする」という直感に従って講演会に活かすなど、かなりフルに使っていると思います。
田邉:いけばなの研修が終わった後、直感の何が変わったんですか?
武田:今までは、直感よりも論理や分析の方が重要だと、仕事の現場でも研修でも諭されることがすごく多かったんです。でも今回の研修は、これからの世の中はそれ(直感)もいかしていかないと乗り切れない、というメッセージだったと思います。なので、論理や分析に加えて直感を活かすような形で取り組んでいくことで、私の強みが発揮されるんだな、と勇気づけられました。

—亀井さんもワークショップ後の変化についてお話し頂けますか?
亀井:私も武田さんと同じようなことを感じました。

「感性を大事にしていかないといけない」と聞いたときに、自分なりに振り返ってみて思ったのが、分析や数字を見るといった仕事をやってきましたが、数字だけを見ていだけではわからないことが多い、ということです。むしろ、数字をどう解釈するかが結構大事で、解釈をするために自分の持っている感性に合っているのかどうかが、ひとつの指標として手助けになるのかな、と改めて思いました。

研修中、何が得られるかをずっと考えながら話を聞いていて、そのためにどういう行動をしたらが得られるのかを考えながら動いていた自分がいました。研修を受けて意味があるかどうかは、「何かを得るようにしよう」という前向きな気持ちがないといけないんだということを、このワークショップを受ける中で感じました。
どんなに良い研修であっても、その人が「意味がない」と心の中で思ってしまったら、何も得られないと思います。逆にちょっとでもいいから自分のためになると思ったら、色々な学びを得ることができるのではないか、と思いました。

—研修に限らず、仕事の場面でも最初から拒否感を持ってしまうと何も得ることはできないし先に進めないですよね。
5.いけばなワークショップの効果 ~楽しみの中から得られた学びは、人の中に残り日常業務にも役立つ~

—では、田邉さんと金泉さんは、どのような気持ちの変化がありましたか?
金泉:いけばなに取り組むにあたって「何を最初にやろうか」を考えました。その時に、何か一つ目的を作ってこういう作品にしよう、というコンセプトを最初に決めました。で、そのコンセプトに向かって花をいけていくわけです。私の場合は“レッドダイヤモンズ”というコンセプトをまず決め、それをどう形にしようか、ということだけを考えて作品に取り組みました。
赤い花や赤い花器を選ぼう、サッカーをコンセプトにしたような花器を選ぼう、といったことから考えていました。なので、何か物事に取り組む時に最初にコンセプトを作ることや、目的を持つことの大切さを改めて学びました。本当に面白かったです。真っ白でしたからね。

—「面白い」とか「真っ白」という気持ちは非常に大事ですね。
金泉:まさにそうだと思います。他の研修は、わかりきっていることが多いだけに、やったことがないことをやる研修をパッケージ化することで、得られるものがあるのではないか、と思います。
田邉:終わった後に金泉さんが言ってくれたのが、まず「楽しかった!」ということなんです。いろいろな場所に学びは溢れていると思いますが、「楽しみの中から得られた学び」は、確実にその人の中に残りますし、日常業務にもその学びが繋がっていくと思います。今回のワークショップを通じて、そのような学びを首都圏営業部の皆さんに提供できた、と感じています。
また、一番印象に残っているのは、会社の中では見られない顔を、結構皆さんがされていたんですよね。すごく集中していたり、本当に悩んでいたり、すごく笑顔で取り組んでいたりしていました。そのように、人が本来持っている喜怒哀楽の感情を表現できる場だったんだな、ということに気づきました。

—いろいろな表情が見えるということは、多分皆さんそれぞれのニーズが満たされた瞬間だったのかもしれませんね。
田邉:私は、研修の時に写真を撮らせてもらうのですが、このワークショップは今までの中で一番撮影点数が多かったんです。つい撮りたくなってしまう空気感が場に生まれたんだと思います。
金泉:一人ひとりの個性も出ますよね。繊細そうな人がズバズバいけたり、ズボラだと思っていた人が丁寧にやっていたり。「人間ウォッチ」にもなって新鮮でした。

—それもアートの威力ですね。
田邉:講師の先生のお力もかなり高かったんだと思います。アートとビジネスの接続を説明するセットアップから始まって、福島先生(草月流いけばな師範)のフィードバックが参加者の納得感をすごく得ていたように思いますし、最後には皆さんの振り返りを深めるような関わりを徹底的にやってくださったのが、すごく大きな力になったんじゃないかなと思います。
6.ファシリテーターから見た 参加者の変化

—ファシリテーターの酒井さんから見て皆さんの雰囲気の変化などはどのように感じましたか?
酒井:最初のチェックインのときは、皆さん、「何をやらされるんだろう」という緊張を感じられていたと思います。しかし、最後には楽しそうにされていて、また、全体の一体感が生まれた気がしました。そのようなチームビルディングが生まれて「楽しかった!」と皆さんが全身で表現されていたのは素晴らしかったと思います。

—私も、年齢や性別に関係なく、全員がひたすらつくりたいものをつくりあげているところが魅力的だな、と見ていて感じました。
酒井:右脳型研修だと、参加される方も、先にこういうことを言った方がいいんだろうな、といったことを頭の中で整理されるので「どこかから借りてきた言葉」が出がちになります。しかし、自分の手を使うことで、自分にしか言えない言葉が皆さんから出てきたと思います。
7.グループ創作を振り返って

—参加者の皆さんが口を揃えて「楽しかった!」とおっしゃっていた午後のグループ創作について、ワークショップ時の写真を見ながら、少し振返りたいと思います。
最初は、メンバーで「どうしようか」と相談しながら、あれでもないこれでもないと花器を選ばれていましたね。

—また、実際の創作では、協力して作ったり、全体俯瞰のために、誰かがいける様子をちょっと遠くから見たりされている姿も印象的でした。

—また、実際に作品を見ながらのグループ対話では、「そういう風に見えるんだ!とメンバーの多様性を感じた」という感想や、「正解はないので色々やってみようと声をかけあい、心理的安全性がある中でチャレンジができた」といった感想もあがっていました。
8.いけばなワークショップ 今後の可能性

—ワークショップが「楽しかった!」とおっしゃっていただいて、営業担当としてとても嬉しいです。このワークショップの改善点や今後の可能性について、何かお感じのことがあれば教えてください。
金泉:先ほども言いましたが、役職、年齢や性別関係なくやった方が可能性が広がると思います。真っ白で取り組むことができるので。通常の業務だと上司や先輩の方が経験値もあったり上からものを言ったりする傾向があります。
でも、新しいことをやる時というのは、皆が同じスタートラインで、同じチームとして取り組むことができるので、非常に意義があったと思っています。共同で作品を作るプロセスを通じて、同僚間でのコミュニケーション力を高め合うことができますね。いかんせん答えがないので、「どう作っていくか」を試行錯誤するところに学びがあるのではないか、と思います。
亀井:新しいチームでのチームビルディングなどにも役立つかもしれませんね。
初めに個人ワークで多様性の重要性などを学び、それを現場で実践してみようと思うことによって良いチームができあがっていくかもしれませんね。

—確かに、いけばなのグループ制作では、「少し率直に自分の気持ちを伝えよう!」とか、「どう伝えればちゃんと伝わるようになるかな?」といったコミュニケーションやチームワークをする上での気づきが得られますね。
田邉:私は、フィードバックをもう1回しっかり学び合う場としていけばな研修を使ってみたいと思っています。例えば上位者からメンバーや部下に伝える時は、どうしても上下関係のようなものが出てしまって、聞かざるを得ないという関係性はすごく嫌なんです。
何かを作ってそれを媒介としてフィードバックをしてみる。それによって「自分自身の言葉の力と想い」によって、上司と部下の互いの新しい関係性が生まれたり、新しい可能性に気づいてもらったり。そういったフラットな関係性の中でフィードバックをもう1回見つめ直すことができる気がしています。
いま心理的安全性がすごく大事な世の中になってきているだけに、いけばなワークショップの力を借りて、それを試してみたいですね。その先にあるのは、お互いが率直に物を言い合えてフィードバックをちゃんとできるという健全な文化だと思います。健全な組織を作っていくために、フィードバックの在り方を見つめ直したいと思っています。いけばな研修には、そんな可能性を感じました。
9.研修会社への期待

—最後に、いま、社会人の学び方も変わってきている中で、今後、研修会社にはどのようなことを期待されていますか?
金泉:私は、真っ白になって取り組めて、楽しみながら学ぶことができて成果物が生まれる研修をぜひ開発して欲しいと思っています。私自身がマネジメントという立場になったときに、いろいろな研修を受けてきましたが、一番心に残っているのは「スポーツから学ぶマネジメント」という本で、今でもそれがバイブルになっています。
そのような新しい研修スタイルを、どんどん開発して頂きたいと思っていますし、大いに期待しています。
田邉:私も、「楽しさ」や「喜び」の提供は、外部の研修会社さんに望んでいることです。今、越境学習の必要性が高まっていますが、社内での学習機会は限られています。越境によって、「楽しみ」や「喜び」や「記憶に残る」学びが得られると言われていますので、そういったものを提供して頂けるパートナーになって頂けたら嬉しいです。

—ありがとうございます!今後もご期待に沿えるよう頑張ります!