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《これからのキャリア発達モデル イベントレポート》 第2回 年齢を超えよう

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2024.9.24

「これからのキャリア発達モデル~9つのテーゼ~」の内容をご紹介するイベント 第2回目。今回とりあげたテーマは、9つのテーゼの中の『年齢を超えよう』です。
イベント冒頭では、特別映像として、81歳でiPhoneアプリを開発したITエヴァンジェリスト 若宮正子氏の映像を鑑賞。
その後、株式会社ANA総合研究所の村松絵里子氏、そしてキャリアのこれから研究所のプロデューサーでもある酒井章氏をパネリストに迎え、このテーマについて対話を重ねました。
ファシリテーターは、キャリアのこれから研究所所長の水野みちが務めました。
イベントの内容をダイジェストでお届けします!
●イベント実施日 2024年7月23日
●「これからのキャリア発達モデル~9つのテーゼ~」詳細ページは、こちら
●執筆:原博子 キャリアカウンセラー

1.主催者からの挨拶
キャリアのこれから研究所所長 水野みち
水野:キャリアを考えるときに、皆さんの中にはどのような囚われがあるでしょうか?「もういい年だから、まだ若いから」とか「私には、それは無理」など。
これからのキャリア自律において、様々な囚われから自分を開放することが益々重要になってきています。なぜなら、これからのキャリアは、人生100年時代。誰も歩んだことがない世界が待っている時代だからです。
自分の中にある囚われは何か、または組織の中にある囚われは何か、それによってみんなのチャレンジやキャリア形成を妨げているものがあるとすれば、それは何でしょう。そして古い慣習に囚われず、乗り越えている人たちには一体どのような特徴があるのでしょうか。また、囚われを超えていける職場環境とは、どんなものなのか。そんな切り口も一緒に「年齢を超えよう」について考えていきたいなと思っています。

2.ITエヴァンジェリスト若宮正子氏の映像を参加者とともに鑑賞~特別映像~
ITエヴァンジェリスト 若宮正子氏
~9つのテーゼの研修で放映する映像。前半、後半分かれている映像を今回は両方放映。参加者の皆さんが本日のテーマである「年齢を超える」ということを考えていく上で、様々な心が動く映像でした。~
若宮氏の映像鑑賞を終えて 自己ステレオタイプ化について
水野:囚われには様々な形がありますが、社会や文化の持つステレオタイプに沿って自分自身を規定してしまう、定義してしまう、という心理状態を自己ステレオタイプ化と呼びます。周りから見られている自分というものに自分を当てはめてしまう。
例えば、海外に行って、「アジア人だから算数が得意でしょ」と周囲からステレオタイプに当てはめられたことによって、自分自身に対して算数が得意なはずと思い込んでしまう。しかし、よくよく考えると実際にはそんなに得意ではなかった、など。この自己ステレオタイプ化は、時に自分自身を狭めてしまいます。
しかし、若宮さんは、周囲から見られる自分のイメージを良い意味で裏切り、まさに天真爛漫さ、自分らしさというのを維持し続けていました。非常に頼もしいというか、強いところだと思いました。
若宮さんの言葉に「とりあえずやってみる主義」とありました。何でも「見たい。やりたい。知りたい」と。
周囲からの期待で、これをやらねばならないではなくて、自分から自分の人生を楽しむというようなスタンスがまさに自己ステレオタイプから抜け出て、自分がどう生きたいのか、自分らしさは何か、ということを実現していくヒントがかくれているのではないかと思います。
改めて、今日はお2人のゲストのお話も伺いながら、年齢や周囲からのステレオタイプをどう乗り越えて、どう自分らしさを発揮して生きていくのか。そこをまさにキャリア形成、キャリア自律と捉えて、一緒に考えていきたいと思います。では早速ですが、パネルディスカッションに入っていきたいと思います。

3.パネリスト紹介 ~村松さん、酒井さんのキャリアストーリー~

株式会社ANA総合研究所 村松絵里子氏
「皆様、こんにちは。村松絵里子と申します。どうぞよろしくお願いします。私は現在、航空会社系グループ会社のシンクタンクで研究員をしています。今まで培ってきたことを大学で教えるといったことをしています。」
~村松さんのキャリアは「今まで培ったものがつながっていく」そんなつながりをとても感じるキャリアという印象でした。だからでしょうか、キャリアストーリーの中で怪我をされたことが語られましたが、その時使われた「キャリアの断絶」という言葉がとても耳に残りました。「つながり」そして「断絶」。この2つが村松さんのキャリアストーリーの中には共存しているようでした。~
⇒★村松さんのキャリアストーリーは、こちら

キャリアのこれから研究所 酒井章氏
「酒井です。よろしくお願いいたします。現在、クリエイティブジャーニーという会社の代表、キャリア開発・組織開発や企業ブランディングなどをしています。日本マンパワーさんとのご縁では、キャリアのこれから研究所の設立に関わり、現在プロデューサーという形で携わっています。」
~酒井さんの今のキーワードは「ゆっくり」。若宮さんの映像に関しては、インタビューに立ちあい、複数回ご覧になっているとのことですが、見るたびに印象に残る言葉が違うとのこと。今回は、一番印象に残ったのは「慌てなくていい」という若宮さんの言葉。ここに今の酒井さんがあらわれているのではないか、と感じました。~
⇒★酒井さんのキャリアストーリーは、こちら

4.パネルディスカッション
パネリスト 村松絵里子氏・酒井章氏
ファシリテーター:水野みち

(1)乗り越えてきたもの
水野:お聞きしてみたいのですが、お二人に対して周囲が持ったステレオタイプみたいなものは感じられる瞬間ってあったと思うんですね。広告代理店の酒井さんとか、航空会社でCAの村松さんなど。こういうことは、例えば怪我をした時に何かそのアイデンティティがゆらぐとか、それによる喪失感とか、または海外赴任から帰ってきて酒井さんもいろんなことを感じられたこともあったかもしれないですし、バリバリと働く業界の中での介護という問題も、もしかしたらご自身にいろんな影響があったのではないかと思います。
~このあたりの詳細は、村松さん、酒井さんのキャリアストーリー(3章にリンクを貼っています)をお読みください~
周りから見たらキラキラしたキャリアでも、一つひとつ乗り越えられてきた何かがあったのではないかと思います。そのあたりをよかったらお聞きしたいと思っています。
村松さん(以下敬称略):客室乗務員であった自分は、客室乗務員にはこうあって欲しい、という想いも感じましたし、夢を壊してはいけない、という気持ち、期待に添いたい気持ちもありました。頑張ってそのゾーンに近づけようという自分も。でも、怪我をして、突然その仕事ができなくなった時に、わたしのアイデンティティはどこに持っていけばいいんだろうと感じました。さっき、水野さんは「喪失感」っておっしゃいましたけど、喪失・・・どちらかというと危機ですね。アイデンティの危機。大切なものを取られてしまった時に、わたしは何者になれるのだろうか・・・と。
 アイデンティティの危機 ※画像はイメージです

~アイデンティティの危機を早くに迎えられた村松さんだからこそ、自分と深く向き合い続けたことが伝わってきました。また、酒井さんからは、「自己ステレオタイプ化によって抱く会社への誇り」ということが語られました。
 酒井さんは、昔、社内のある方にインタビューをした際にこう言われたそうです。「生きている限り、会社の名前を傷つけるわけにいかない」と。酒井さんはそれを聞いたときに涙が出て仕方なかったとのこと。なぜ涙が出たのでしょうか。自己ステレオタイプ化には、良い側面・良くない側面両方あると思います。自分と会社のアイデンティティが一体化しているからこそ、会社の経験に誇りを持ち続ける、ということもあるのかもしれないと考えさせられました。酒井さんの語りが印象的でした。~

水野:喪失、危機というお話もありました。でも一方で自己ステレオタイプが逆にあったからこそ、色々なことに挑戦できたといった方もいそうですね。
村松:初めて、自分の身体が動かないってことになったときのことを想い出すと、頭はしっかりしてるけれども、身体が動かないときに、自分には何ができるのだろうと考えました。会社の総務の方は手当のこと等は相談にのってくれましたが、私のキャリアについては誰が相談にのってくれるのかな、と考えました。それでCDA(キャリアコンサルタント)という資格があることを知りました。

(2)仕事とは関係ない人たちとのつきあい~サードプレイス~
村松:CDAの学びによって、ひとつの目的のために集まった、会社以外の仲間ができました。よく「サードプレイス」という言い方がありますが、仕事と直接関係のない人たちとの付き合いというか、第3の場でした。私を乗務員として見ない人たち、そういう人たちと付き合いが始まったことは自分にとって大きかったと思います。
水野:何かここにもヒントがありそうですね。自分にとっての仕事以外の「サードプレイス」があるということが逆に自己ステレオタイプの呪縛やアイデンティティ危機の局面を乗り越えていく勇気づけに繋がっていったんですね。
越境へのチャレンジ *画像はイメージです
酒井さん(以下敬称略):「サードプレイス」ということで言えば、私自身、「越境」というテーマにはずっと取り組んできました。「越境」することによる大きなメリットは、他者と触れ合うことによって自分を客観視できるということです。でも「サードプレイス」や「越境体験」は必ずしも全てが心地いいわけではありません。村松さんともよく話すのですが、「多様性って面倒くさい」という面もあるんです。自分のいるところから抜け出て、あえて面倒くさいことをするということも、自己ステレオタイプを認識し、様々な自分を発見する上でのヒントにはなるんじゃないかな、と考えます。

(3)好奇心が湧き出てチャレンジし続ける。それは性格?それとも?
好奇心が湧き出てチャレンジし続ける *画像はイメージです
水野:いろんなチャレンジをしていくことが求められがちですが、年齢を重ねる内に、疲れてきたり気力がなくなったりすることもあるかと思うんです。若宮さんもそうですが、お2人を見ていると、好奇心がむしろどんどん湧き出てチャレンジし続けているように見えるんですが、それは何が秘訣でしょうか。何かの転換期があったんですか?それとも昔からそういう性格でずっとやってこられたんですか?または、逆に会社から少し離れたところでまた好奇心が戻ってきたといったご経験はおありなんでしょうか?
村松:性格だけではない気がしますね。どちらかというとプランドハプンスタンス(計画的偶発性)のように私のところに転がってくるものがあれば、やってみようかなっていう感じです。何か巡り合わせがあるのであれば、きっとそれは私にやってみたらどう?といったメッセージなのではないかと思ったりします。もちろん、ちょっと面倒くさいとか、仕事との両立は難しいなどということも思ったりします。でも、先ほどの若宮さんのように、駄目だったらやめればいいかなっていうスタンスです。もしくは一旦止めて、また、できるときに続きをやるといった、一時休止をしてもいいので、絶対にやり遂げなければいけないという負荷はあまり自分にかけません。チャンスが何かのご縁だったらやってみようかなと、面白そうかなっていう、そんな感じです。
酒井:私ももともとの性格というよりも後天的なものかな、と思っています。会社にいた時に「(職業柄)とにかく好奇心を持て」とずっと言われてきました。そういった経験を経て「越境」経験を重ねると、何か新しいことを学んでいないと不安になる強迫神経症的な面も生まれている気もします(笑)。でも、先ほどお話ししたように、ひたすら学び続けたり走り続けたりしていていいんだろうか、ゆっくりしてもいいんじゃないか、と最近思っているところもあります。今は「急がず、とりあえずやってみる」と思った方がいいのかな、と。
水野:ありがとうございます。「ゆっくり」ですね。最近はマインドフルネスという言葉もありますが、都度都度の自分の感覚をリラックスして味わい、比較や他者評価ではなく、自己価値を高めていくことも、自己ステレオタイプから自由になるには必要なのかもしれませんね。それが持続可能なキャリアのチャレンジにつながるのではないかと感じました。

5.全体シェア・参加者からの質問
ファシリテーター・パネリストで色々なテーマについて対話を重ねた後、参加者もグループにわかれ、今回のテーマでどんなことを感じたのか話し合いました。
参加者からの質問を1つご紹介します。

(1)エネルギーが落ちているとき、どう乗り越えた?
参加者Mさんからの質問:お話を聴いていて、すごくエネルギッシュに感じて、そのエネルギーはどこから来るのかということが、グループみんなの共通する関心事項でした。とはいえ、やりたくないとか停滞期みたいな、自分のエネルギーが落ちている時は、どう乗り越えられたんでしょうか?
村松:Mさん、ありがとうございます。エネルギッシュに見えるんですね。改めて教えて頂いたような感じがしています。自分では意識していない部分だったと思います。もし、エネルギー的なものがあるとすれば、自分の興味関心のあるところにいるからだと思います。自分の興味関心のあるところや、大学院に行ったりしていることでそう映るのかもしれません。
でも、ずっとこの感じが続いているわけではありません。直近ですごく落ち込んだのは、役職定年を自分が迎えた時でした。自分なりに準備はしてきたつもりでしたが、怪我をした時と違い、どちらかというと「喪失感」みたいなものがありました。
ダウンする時はダウンする時で、それも必要な時間です。そんな時は、少しのんびりするとか、自分と丁寧に向き合うというか、なぜ私は今このような喪失を感じているんだろうとか、自分に問いかける時間も大切だったと思います。

~村松さんはご自身の味わった喪失・モヤモヤをさらに研究という方向で深め、現在、役職定年の女性管理職の研究をしています。~

(2)組織において、従業員が活かされる仕組み、切り口とは?
水野:組織の中では「年齢を超える」を促す、囚われから開放される仕組みとしては何が考えられますか?例えば、副業などでしょうか?
酒井:必ずしも社外副業のように組織の外に出る必要はなく、組織の中でも組織横断的な取り組み(社内副業)があっていいんじゃないか、と思います。組織縦割りでなく、横断的に組織同士がつながっていく。それを経営者が支援する。自分の会社だけでは経営課題や事業課題を解決できない時代になっているので、異なる企業やパートナーと繋がって何かをつくる取り組みをやっていくことが、1人ひとりのより良いキャリアにも繋がっていくのではないかと思いますね。
村松:あえて自分のコンフォートゾーンから出ていくっていうようなそういったことで、意外性が見出せたり、全然違う人に、自分の悩み事を聞いてもらうなど、少し課題と思ってることを相談したりすると、思いつかないようなことを言ってもらって視野が広がるというのはあると思います。
水野:今日のテーマの「年齢を超えよう」と重ねて考えると、企業内には強制的に年齢を意識させる構造があると思います。新卒採用、年次主義、役職定年、など。システム的に年齢を意識せざるを得ない構造になっているものもあるので、構造や前提を変える仕組みが大切だと思います。年齢で守られているものに頼る、その良さももちろんあると思うのですが、長い目で持続可能なキャリアというところで見ると1回手放してみたり、新たに「混ざる」とか、「チャレンジする」ことによって、今後開けてくるキャリアもたくさんあると思いました。

6.村松さん、酒井さんから最後のコメント
水野:最後に村松さんと酒井さんから一言ずつコメントお願いします。
65歳以降や70歳以降の自分がどうやって生きて行くのか
村松:企業にいる時間ってせいぜい60とか65までなので、100年までそれから35年ほどあります。企業の中での自分を考えるのはもう本当にちょっと先までで、どちらかというとその先の自分のことを考えていく方が楽しいのではないかと思います。定年や雇用延長が終わる時をドキドキして待つというより、65歳以降、または70歳以降の自分がどうやって生きていくのか、といったことを幅広く考えていく方がワクワクするのではないか、そんなふうに思いました。
これからはマラソンで。ゆっくりと
酒井:エネルギーがある、と皆さんにおっしゃっていただいたのはありがたいのですが・・・もしかしたら今までは短距離走的にやってきたかもしれないなと思っています。でも、人生100年時代と言われるこれからは「持続可能なキャリアをつくる」必要があると思うので、短距離走ではなくマラソンになっていくのかもしれません。「とりあえず、やってみる」「ゆっくりやってみる」ということも必要なんじゃないかなということを、今日改めて感じさせていただきました。

7.クロージングの言葉
水野:ありがとうございました。では最後に、キャリア自律サーベイのご紹介もしながら次回の会のご紹介もいたします。この9つのテーゼを使ったキャリア自律サーベイは、法人のお客様にご提供しております。このキャリア自律サーベイでは、やって終わりではなく、サーベイを実施し、職場の状態を見える化した上で、色々な年齢の人たちが混ざってキャリアについての対話をする場づくりも行っています。通常のキャリア研修よりも満足度が高く、行動化が促進されているとご好評いただいています。他企業での事例がお知りになりたい方がいましたら、お気軽にお声がけください!
最後に次回についてです。次回は「こころの成長痛」ということで、弊社の田中稔哉が、ネガティブケイパビリティをふまえて、8月28日にお話をいたします。ネガティブケイパビリティのワークは、弊社のキャリアコンサルタント養成講座にも盛り込んでいます。
★日本マンパワーのキャリアコンサルタント養成講座については、こちら
本日は、ご参加いただきまして誠にありがとうございました。そして村松さん・酒井さんにも改めて感謝申し上げたいと思います。ありがとうございました。
★イベントレポートを書きながら~おまけ~
このイベントレポートを書いている最中に、今回のゲストのお一人である酒井氏が、このイベントの感想を書いた記事をアップされていました。「あの言葉はこんな意味を含んでいたのか」とか「この話をした際にこのことに思いを馳せていたのか」と感じ、是非、皆さんにもご紹介してみたくなりました。ご覧になってみてください。
★《これからのキャリア発達モデル イベントレポート》 第1回 複線と伏線は、こちら↓

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