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未来共創人材を育む「さとのば大学」2~発起人 信岡良亮さんに聞く(後編)~

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2024.11.21

「『地域』というメガネで見通すキャリアのこれから」の連載 第5回目。今回は、「学びのフィールド」としての「地域」にフォーカス。地域課題や地域活動に関わりたいと思う人が、実際に実践しながら学ぶ場「さとのば大学」の発起人 信岡良亮さんのインタビュー後編をお届けします。
<目次> *本サイトアップ時実装
【前編】
1. キャンパスを持たず、旅して学ぶ「さとのば大学」
(1) さとのば大学の特徴
(2) 気になる課題を起点に学ぶ「マイプロジェクト」
2. 地域での「教育」に関わるようになった経緯
(1)「持続可能な島づくり」をビジョンに掲げる海士町への移住
(2) 異質なものを認め合い、お互いを活かし合うコミュニティ
(3) 地域共創カレッジを開校
【後編】
3.自分たちでルールをつくる、自分たちで変える-コモンズ(Commons)を考えられる人
(1)今、見えづらくなっている「コモンズ(Commons)」とは?
(2) これから働く世代に求められる「巻きこみ力」「社会課題解決力」
4.連載「地域×キャリア」共通質問:地域で働くとは?地域でつくるキャリアとは?

3.自分たちでルールをつくる、自分たちで変える-コモンズ(Commons)を考えられる人

(1)今、見えづらくなっている「コモンズ(Commons)」とは?
海野:さとのば大学の目指す人物像として「未来共創人材」を掲げていますが、どのような人物像をイメージされていますか?
信岡:言葉の通り「未来共創人材=未来を共に創る人材」ではあるのですが、どういう人を指すのかの前に、現在の私たちを取り巻く基盤について、まずはお伝えしたいです。
公(パブリック/Public)・共(コモンズ/Commons)・私(プライベート/Private)という概念をご存じの方は多いと思います。
現在、この中の「公・私」の2つしか見えないように私は感じています。すでにルールを決められて自分では変えることができないように見える[公/パブリック]と、[公/パブリック]と切り離し自分のルール下で動くことができる[私/プライベート]。
本当はこの2つ以外に、関係者で作っていく[共/コモンズ]があります。私は、この[共/コモンズ]を取り戻す必要があると思っています。
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[共/コモンズ]は、共有地・共有財というような意味だけではなく、自分たちでその仕組みやルール、基盤をつくることも含まれると思います。また、[公/パブリック]と[私/プライベート]を繋ぐつなぎ目の役も担っています。
[共/コモンズ]には、いくつかパターンがあります。
1つは土地に紐づき過去を踏襲していく過去共有型、もう1つは、現在必要なお金を稼ぐ共同体システム、現在共有型です。企業などが含まれます。そして、未来のビジョンを共有し活動していく未来共有型などもあります。
海士町は、この中で、まさに3つめの未来共有型コモンズでした。海士町にいる人、そこに携わる人たちが皆、「この島を持続可能な状態にしよう」という共通の未来を見て、1日1日歩みを進めていました。
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私は、これからを生きる人が、未来のイメージを共有し、コモンズを創れるようになってくれたらいいなと思っているんです。だから、さとのば大学に求める人物像として「未来共創人材」とネーミングしました。

(2)これから働く世代に求められる「巻きこみ力」「社会課題解決力」
海野:続いて、さとのば大学の学生たちも含め、次世代のキャリアやこれから働く世代について思うことがあればぜひ教えてください。
信岡:良くも悪くも、キャリアを考えなければならない年齢が低年齢化してきています。これから人口減少が進む中で、何か有効な手を打たなければ、自然にビジネスの規模は縮小し、個々人のキャリアも、その影響を受けることが根底にあります。
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今の子どもたちが大人になる頃、例えば2050年、子どもたちの親世代が考える「普通」は、もう「普通」ではなくなっているでしょう。そういう時代をどう生き抜いていくかという視点が、早いうちから必要になっています。
信岡:その通りです。今後の人口減少社会では、ビジネスだけできれば良いという時代ではなくなると思います。社会課題の解決までできるようにならないと、ビジネス自体も成立しなくなっていく未来が到来するのではないかと考えています。
例えば近年、日本各地で鉄道路線の廃線の課題が起こっています。純粋にビジネスの視点で考えると、人が少ないエリアは、利益が出ないため廃線・撤退と考えてしかたのないことかもしれません。しかし、交通機関を利用している住民にとっては死活問題で困ってしまいます。課題の解決の例として、自治体が援助し、ライトレールやバス、乗り合いタクシーなどに代替する地域も出てきています。
このように、今まではビジネスとして成立していたものが成立しなくなり、色々な社会課題が生まれてきています。
しかし、地域は、都市と比べるとステークホルダーが少なく利害関係が調整しやすいですし、住民も自分事という意識が強いので、課題解決が進みやすい状況もあると思います。
信岡:そう求めるのは、次世代だけに限らず我々も同様なのかもしれません。
ある環境活動をおこなう学生団体のプレゼンテーションを聞く機会がありました。僕がそのプレゼンを聞いて一番はじめに思ったのは「このような社会課題をつくってきてしまったことにたいして謝りたい」という気持ちでした。
我々がつくった社会課題の解決の主体者は次世代ではなく、本来、我々世代であるべきだと思っています。その上で、その社会課題の負債を我々世代だけでは返せない状況になってしまっている今、次世代である彼らには「助けてください」という想いがあります。少しでも社会課題解決に向かって前進した状態で次世代にバトンを渡したい。そういう意味では、これからの世代だけではなく我々の世代も、社会課題に向かって、共に学ぶ立場でありたいです。

4.連載「地域×キャリア」共通質問:地域で働くとは?地域でつくるキャリアとは?
海野:「地域というメガネで見通す働き方とキャリアのこれから」の連載では共通の質問を最後にお伺いしています。信岡さんが考える「地域でつくるキャリア」とはなんでしょうか?
信岡: 「Think Globally, Act Locally(地球規模で考えよ、足元から行動せよ)」という言葉があります。
「地域でつくるキャリア」のイメージとして浮かんだのは、Act Locallyとしてローカル・地域の場でさまざまな実践とオリジナルの経験を積んでいくことができることだと思いました。
誰かの手を必要としている人の声を直接聞いて、自分が行動する。誰かの、または何かの役に立っているという実感は、「ここで生きていていいんだ」という自己肯定感にもつながります。地域に関わることで自分が生きやすくなるんです。
地域のおもしろいところは、誰かの役に立つことで「この間〇〇さんのところ手伝っていたでしょう!うちも助けてもらえないか?」と、人と人の繋がりが起こっていきます。
他者や地域への貢献が、巡り巡って自分に返ってきて、自分がもっと生きやすくなる、という好循環になっていくのだと思います。
<編集後記>
地域でのマイプロジェクトを通して、学生の多くが、その地域の社会課題に触れて「自ら仕事を創る」という感覚と経験を培っていくだろうと感じました。これからのキャリアの選択肢の1つとして在れたら素敵だなと思いました。私自身もNPOの場に軸足を置く中で、社会課題と仕事の重なりを強く感じています。さとのば大学の在り方と発起人である信岡さんの考え方に大きな共感をしています!(海野)

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