アカデミック×実務で「人事の軸」をつくる ─HRイノベーションアカデミー第1期レポート
未分類
2025.7.15
「せっかく施策を導入したのに、社員の反応はいまひとつ…」
「私のこの仕事、本当に意味があるのかな?」
そんなモヤモヤや迷いを抱えながら、現場に日々向き合っている人事の皆さんへお勧めしたい講座が、HRイノべーションアカデミーです。人事制度や理論を学ぶだけではなく、「なぜその施策が自社に必要なのか」「どうすれば社員の心に届くのか」を、多様なアカデミア・実務家との対話を通して立ち止まり深く考える講座です。
今回、受講生の皆さんがどのように迷い、何に気づき、どう仕事が変わったのか──そのリアルな声をお届けします。
●インタビュアー
日本マンパワー HR法人ソリューション本部 嶋・岩下(HRIA講座担当)
●執筆 石澤寧・緒方雪絵
1HRイノベーションアカデミー ~アカデミック×実務をクロスさせた学び~
「HRイノベーションアカデミー」は、2024年に、日本マンパワーが新しく開講した講座です。
人的資本経営、戦略人事、EXジャーニーなどのトピックを、先進的な学問知識を持つ大学教授と、企業人事部門のエキスパートやCHRO等をゲストに迎え、インタラクティブに学ぶ機会をご提供します。

人事としての視座を一段高めたい方に、特におすすめの講座です!
世の中の価値観の変化や制度の複雑化にともない高度化する人事課題。組織のサイロ化も進み、情報共有や連携が十分でない企業も多いといわれています。
「高度化する人事課題を解決し、組織を活性化できる人材を育てるお役に立ちたい」そんな思いで、当社ではこの講座を立ち上げました!
株式会社日本マンパワー フェロー 水野みち
(1) 講座の特長
・各分野で最先端を行く豪華講師陣
・最新のトレンドを取り入れたカリキュラム
・自社課題の解決に役立つ実践的学び
・会社を超えた人事のネットワーク形成

(2) 講座のカリキュラム
全6日間のリアル学習、事前の映像学習、学びを振り返るバディコールを通して、自社の課題と具体的施策をまとめていきます。
*リアル学習:1日各3時間、最終日のみ6時間
*バディコール:応用力を鍛えるための、講座外グループ学習。リアル学習後、少人数の受講者同士で、1時間、リアル学習の振り返りをします(リアル・オンラインどちらも可)
カリキュラムの全体
2インタビューに協力いただいた アカデミー第1期受講生
33人の人事が語る「なぜこの講座を選んだのか?」
~ここからは、HRイノベーションアカデミー講座担当の嶋と第1期受講生3名の
座談会形式でお届けします!なお敬称は省略しております。~

受講前はどのような課題を持っていましたか?

前職を含め人事歴は7〜8年になりますが、実務中心で体系的に理論を学ぶ機会は、あまりありませんでした。また、アカデミックな視点から人事を学ぶ時も、実務への落とし込みが難しいと感じていました。
しかし、転職を通じて業種も風土も全く違う2社を経験したなかで、だんだんと両社の思想の違いを、フラットに肯定的に捉えられるようになりたいと思うようになりました。それが、アカデミックなフレームワークで認識し直したら出来るかもしれないと。
受講前は、ちょうどそんな外部の学びの機会を求めていた時期でした。

私は昨年4月から人事の仕事を始めたばかりで、しばらくは目の前の仕事にキャッチアップするのに必死でした。心のなかで「きちんと人事について学びたい」と思っていた時にこの講座を知りました。
アカデミックな角度からの学習と、実際に企業でどう活用されているのかという実践の両方を学べるのが、自分のニーズにぴったり合っていたんです。
また、営業職時代、お客様に一番近いところで仕事をしていることに誇りを持っていました。人事でも「従業員に寄り添える存在になりたい」と考えていたので、その想いも受講につながるきっかけだったと思います。

私は、 前職では営業トレーナーとして人事の社員と話す機会が多かったのですが、自分の専門知識が足らず、理解が十分でないと感じていました。
転職して人事の仕事に携わることになり、他社の人事担当者がどのような取り組みをされているのか、どのような考えで施策に向き合われているのかを学びたいと思っていました。社外の同世代の人事の方々から、実際の経験や工夫を聞ける機会を求めていました。
4学びの仕組み~どう深めどう持ち帰る?~

実際に受講されて、いかがでしたか?

リアル学習は、最先端のアカデミックな話・企業人事の実務に基づく話と盛りだくさんで、正直、講義の3時間のなかで消化しきれないことが多々ありました。だから、講義外の時間に、受講者同士のグループで対話する「バディコール」があったのは本当によかったです。
「講義で聞いた内容は、どう活用すればいいんだろう?」とみんなで話し合ったり、登壇者と同じ企業の方に「実際どうですか?」とさらに聞いたりすることで、自分の中での理解が深まりました!

私も、末吉さんと同じで、「バディコール」の中で、講義で感じたことを振り返ったり、自分がかみ砕けなかったことを話し合ったりする中で、だんだん思考が整理されていく感覚がありました。
また、異なる業界の方との議論は、自分の視野をぐっと広げてくれました。例えば、アルバイトが多い業界と正社員中心の業界では、人材開発のアプローチが違います。その違いを知ることで、自社の施策を相対化して見ることができるようになりました!

私は、リアル学習で、大学教授や有識者のアカデミックな視点と、それを実務に落とし込んでいる人事の方と両方から学べたことが、とてもバランスが良かったと思います。
というのも、これまでアカデミックな知識を勉強していて、「それが大事なことはメチャクチャわかるけど、実際、会社の中で実現するのはハードルが高いな…」と思うことが結構あったんです。でも、HRイノベーションアカデミーでは、「経営層などをどう巻きこむか」という実践の知恵も得られたので、とても良かったです!

リアル学習と言えば、登壇者が扱うテーマについて、最初に定義づけをきちんとしてくれるのも良かったですよね!
例えば、「EXジャーニー(従業員体験)とはこういうことです」という定義があって、それに基づいて議論していったから、内容が拡散せず、より深い学びになったんじゃないかと思います。
5EXジャーニー 「この会社で働けてよかった」と社員に思ってもらえていますか?

リアル学習で、特に印象に残った講義やお話はなんですか?

まずはやっぱり、リアル学習2日目の「EXジャーニー」です。
★「EXジャーニー」とは?
Employee Experienceとは従業員体験、従業員が会社に入社してから退職するまでの体験全体を指す概念。従業員が企業で働く中で得られる体験を時間軸に沿って捉え、組織の制度や文化を改善していくための枠組み。
「EXジャーニーマップ例」は、こちら
アカデミックな面から講義いただいた伊達さんの、「採用や離職防止が主目的ではなく、従業員がこの会社で働けてよかったと心から思えるような、意味ある時間を増やすことが本質」という話が心に残っています。人事は、制度をつくる役割というより、体験をデザインする役割なんだと感じました。

マクドナルドは、全国で約21万人のクルー(アルバイト)の方が働いています。だから、マクドナルドで良い従業員体験をしていただいて、バイト卒業後もマクドナルドを好きでいてほしいんです。

以前、他講座に参加された、とある老舗企業の人事の方が、横尾さんと同じように、「ファンのままで辞めてほしい」というお話をされていました。
「うちの会社をずっと好きでいてくれる人が社会に広がっていくのであれば、辞めるのは全然かまわない。その人の人生だから。」と。これぞまさに「EXジャーニー」が目指すものかもしれませんね。

本当にそうですね!印象に残った講義はもう1つあります。 4日目の 「戦略人事の多面的アプローチ」で 学んだ「人材ポートフォリオ」の考え方です。
前職の営業トレーナー時は、「受注率をあげるために、どういう研修をすべきか?」といった「点」に集中していました。短期育成の視点だけだったんです。
しかし、人材開発の仕事は、10年後を見越した長期育成の視点が必要です。だから、経営戦略達成のため、どのような能力を持つ人材を、どのタイミングで確保・育成していくかという人材ポートフォリオも非常に印象に残りました。
6HR帰属という考え方~人事だからこそ、言葉を丁寧に紡ぐ~

私は、2日目に登壇されたマクドナルド人事の斎藤さん(斎藤 由希子さん 日本マクドナルド 取締役 執行役員 CPO)の、1つ1つの言葉が記憶に残っています。
「会社を変えたければ3年ごとにびっくりするもの(制度)を打ち込むと、10年で変わる」
「人事は実現しないことを約束してはいけない」
「人事が言葉を発する時は、きちんとキャッチコピーをつける」などです。

マクドナルドの斎藤さんが、「1つのワードを決めるのに30分対話する」と話されていましたよね。私も印象に残りました!

当社サイボウズも、ワードを決めるために時間をかけて議論することがよくあります。前職とは全く違う文化で、最初は戸惑うこともありましたが、講座を通じて、改めて「人事が発する言葉の重要性」を認識し直しました。

大沼さんの話は、Day3で学ぶ「HR帰属」にもつながるお話ですね。
★「HR帰属」とは?
従業員が、人事施策の理由や原因を、組織や人事部門の行動に帰属させて解釈する概念。従業員の帰属意識を高める上で重要な要素と言われている。
例「なぜこの人事施策が実施されるんだろう? 人事部が従業員のことを考えて、この施策を導入したのかな」

そうですね。私は今、タレントマネジメントのチームも兼務しているのですが、「より高い共感を得るために、この施策の理想や意図をどうやってメンバーに伝えるとよいだろう?」と日々奮闘しています。
7企業が成長する段階で、それぞれ課題がある

私は、1日目のサイボウズ人事 髙木さんのお話が衝撃でした!人事が経営に対して影響力を持っている、他部署との衝突も恐れず対話しながら新しい施策をぐいぐい進めている、経営会議も人事が仕切っていると聞いて、「なんて力強い人事だろう」と。
ただ、キラキラして見えるサイボウズさんでも、サイボウズさんなりの課題をお持ちなんですね。泥臭く動かれている現場のお話を聞いて、親近感がわきました!企業が成長していく段階それぞれに課題があると分かりました。

私の働く三菱自動車工業では、「ものづくりの精神」を中心に据え、「お客様にとっての安全・品質」と「社員の安全・衛生」を最優先に、企業活動を行っています。
だからこそ、新しい人事施策の導入においても、現場の声に耳を傾けながら丁寧に検討を進めていく文化があります。
こうした「会社のぶれない軸」や社風を大切にしつつも、サイボウズさんなど他企業の事例からも気づきを得て、柔軟に取り入れていけるよう、前向きに学び続けたいと思っています。
あとは横尾さんと同じで、私もEXジャーニーは、とても印象に残っています。
8現場に戻って何が変わった?

人事の役割の幅広さを改めて実感し、「点で捉えていたものを線で捉える」視点が持てるようになりました。具体的には、自分の担当業務のオンボーディングについて、EXジャーニー(従業員体験)の観点でも考えるようになりました。
入社した人たちが会社のファンになり、よりスムーズに組織の中で活躍できるよう、より施策を充実させていきたいと思います!

私は講座を通じて、仕事の捉え方が変わった気がします。企業の「資源」である人に働きかけられる人事の仕事は、すごいパワーを持っているんだなぁと。自分の仕事についても、可能性が広がったように感じています。
例えば、担当業務の1つ「幹部候補者研修」では、サクセッションプランとのつながりがより見えるようになり、サクセッションプラン担当の先輩と、情報共有したりディスカッションしたりする機会が増えました。
また、HR帰属の考え方を学び、全社メッセージを発信する際、「従業員にどう受け取ってほしいか、どう受け取られるか」を、より考えて発信するようになりました。

事業戦略パートナーとしての人事の役割が理解できたのが大きな収穫でした。会社の動きや、人事の他チームの動きをより意識するようになりました。「このチームは、あの事業戦略を見据えて施策を提案しているんだな。じゃあ、私のチームでもこういう横連携をした方がいいかな」と気づくことが増えたと思います。
また、受講前に感じていた、前の会社と今の会社の思想の違いを肯定的に捉えるという目的も達成できたように思います。業種や事業が違えば、思想も、必要な施策ももちろん違うと改めて理解できました。
何が良い・悪いではなく、1つ1つの施策を、その会社が大切にしている考え方、事業戦略などを通じて、どう判断し取り入れているのか。そういう目線で自社も、前職も、他の企業の取組みも、引き続き学んでいきたいと思います。
9一段先の人事へ
皆さんのお話から、「HRイノベーションアカデミー」を通して、人事の役割が単なる制度運用に留まらず、経営戦略の実現に不可欠なパートナーであることを実感いただいているように感じました。
アカデミックな知識と実務経験を融合させながら、多面的に人事施策を考える力が育まれたご様子や、他業界の仲間との対話から新たな視点を得られたというお話を伺い、講座を企画した私たちも励まされました。
このような学びと成長のプロセスを通じて、ご参加いただいた方々が自信を持って自組織の業務に取り組んでいただけていることが、これからの人事の可能性をと新たな役割を見出すきっかけになることを願っております。
日本マンパワー 嶋


プロモーションイベントの運営・実務を担当。趣味は読書といけばな。最近、涙もろいのが悩みです。
この記事はいかがでしたか?
ボタンをクリックして、ぜひご感想をお聞かせください!
RECOMMENDED関連おすすめ記事
人気記事
-
PICK UP
イベント
【後編】中原淳教授と語るこれからのキャリア発達モデル~9つのテーゼ~
2022.8.29
-
PICK UP
イベント
【中編】中原淳教授と語るこれからのキャリア発達モデル~9つのテーゼ~
2022.4.22
-
PICK UP
イベント
【前編】中原淳教授と語るこれからのキャリア発達モデル~9つのテーゼ~
2022.4.19
-
イベント
「それってイミありますか?」 -Z世代が問いかける、これからの働き方のリアルとは-
2022.2.8
-
PICK UP
特集記事
ひとり一人には役割がある。アーティスト・小松美羽氏が語る言葉と“これからのキャリア”の重なり
2020.12.28
-
インタビュー
個人
マーク・サビカス博士「コロナ禍におけるキャリア支援」 オンラインインタビュー(後編)
2020.12.4
-
インタビュー
個人
マーク・サビカス博士「コロナ禍におけるキャリア支援」 オンラインインタビュー(前編)
2020.10.30