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キャリこれ

シリーズ「EX(従業員体験・経験)というメガネ」 がスタートします

連載記事

2025.12.9


執筆:酒井章(キャリアのこれから研究所プロデューサー)

なぜ今「EX」なのか?背景と潮流

EX(Employee Experience)という取り組みが広がりの兆しを見せています。

では、なぜいま「EX」なのでしょうか?

その背景には、グローバル化、AIに代表されるテクノロジーの進化や日本における少子高齢化といった事業を取り巻く急速な変化に伴い、働き方が様々な局面で変化していることが挙げられます。

EXが求められる背景」として以下の要因が述べられています(

●人材の流動性の高まりによって従業員の引き留めが困難になっている

●価値観の多様化によって個へのアプローチが重要になっている

●テクノロジーの進化によってデジタルを用いた体験の重要性が増している

●顧客体験(CX)を高める前提としてのEXの重要性の認識が広がっている

何よりも、人と会社や組織の関係性が「親子(会社が個人を選ぶ)」から「パートナー(個人も会社を選ぶ)」のフェーズへと変化しています。このような状況の中で、人事もその在り方を見つめ直す時が来ているようです。

 

人事の主な機能は、これまで会社・組織主体の「管理」でしたが、これからは(管理の機能も引き続き大切ですが)個人・社員視点がますます求められることになります。

人事は「社員を顧客とするマーケティング組織」になっていくのかもしれません。そして、このパラダイム転換のために「Experience」という概念が求められることになります。

「Experience」という概念の広がりとEXの登場

Experience」という概念を最初に広めたのは、マーケティングの分野でした。インフォメーション・テクノロジー(IT)の発達や統合型コミュニケーションの普及などを背景として1990年代末に登場します。

 

それに先立って“UX(User Experience)”概念を提唱したのが、デザイン領域における古典的名著「誰のためのデザイン」(ドナルド・ノーマン著)であり、21世紀にデジタル技術が飛躍的に進化するのに伴ってUXは消費者のタッチポイントを指すUI(ユーザーインターフェース)の概念とセットで急速に広まっていきました。そして2010年代半ば、“Experience”の概念は「EX(Employee Experience、従業員体験)」として人事の領域へと伝播していったのです。

3EXというメガネで見通す未来

日本にもいま「人を大切な企業価値の源泉とする」人的資本経営の動きが広まる中、「EX」が重要視されることは必然の流れと言えるでしょう。そして、人事は「人事部門だけではなく会社全体、社員全員で取り組む(=これを「人事の民主化と呼びます)」「顧客のより良いExperienceを通じて(=CX)事業の成長へとつなげる」、さらには「社会課題の解決にも寄与する」といった期待を担っていくことになりそうです。このような潮流の中で、EXとは「人、組織、社会を見通すメガネ」という役割を果たすのではないでしょうか。

 

また、“Experience”には「体験」と共に「経験」という意味も含まれます。EXは、その時々の体験(面)だけではなく、体験がつながって行くことでより良い経験(線)が紡がれていく、正にキャリアそのものを表す概念とも言えます。

本シリーズでは、EXというメガネを通じて「働き方のこれから」「キャリアのこれから」「人事のこれから」「社会のこれから」を見通していきます。どうか、ご期待ください。

出所

*1 PwC 「今後の労働力の変化に向けて今行うべき準備とは」(2019)

*2 PwC NextGenA Global generational study(2013)

*3 日本経済新聞 「1534歳の転職希望「定年前」27%に増加 厚労省調査」(2019)

*4 PwC 「第23回世界CEO意識調査 高まる不確実性の波を乗り切る」(2020)

*5 PwC Experience is everything: Here’s how to get it right(2018)

*6 PwC 「世界の消費者意識調査2019(2019)

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