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“部下のための時間”が成果を変える 1on1の本質と実践方法【前編】

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インタビュー

個人

2025.12.16


この記事は、「1on1を導入したいが進め方に不安がある」「すでに1on1を実施しているが、期待した成果が得られていない」といった課題を抱える企業の人事担当者の方におすすめです。

 

今回は、ヤフーで人材育成を主導し、日本国内でも有数の1on1実践者である堀井耕策氏に、形骸化する1on1の問題点と、1on1の本質について伺いました。

 

堀井耕策氏監修によるeラーニング

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1まずはチェック!あなたの会社の1on1、うまくいっていますか?

~1on1の目的がわからず、形骸化しているという声をよくお聞きします。本章では、1on1で起こりがちな課題を整理し、混同されがちな面談との違い、そして1on1の本質を紐解きます~

(1) 当てはまったら要注意のサイン

堀井

『日本の人事部 人事白書2025』によると、1on1ミーティングは日本の7割以上の企業で実施されています。また、「今後予定」「検討中」という企業を含めると、実に9割以上に達します。

 

このように、データ上は、人材育成手法の1つとして定着した1on1ですが、現場からは「うまくいっていない」という声もよく聞こえてきます。

 

あなたの会社の1on1は、いかがでしょうか?

例えば、次のリストの中で、もし1つでも該当するものがあるなら、十分に機能していない可能性があります。

【チェックリスト】

あなたの会社の1on1、こんな状態になっていませんか?

□ 雑談や世間話で時間が終わってしまう
業務の進捗確認の場になっている
上司が一方的に話している
部下から「何を話せばいいかわからない」と言われる
□ 1on1
の後、何も変化が起きない
上司も部下も「やらされている」感がある
形式的に実施しているだけで、効果を感じない

(2) なぜ形骸化してしまうのか?

堀井
私は今、1on1エヴァンジェリストとして、多くの企業で、1on1の推進やコンサルティングにかかわっています。現場で見えてくる課題は多岐にわたり、チェックリストにあげた内容もその一部です。
実際には、上司側からは「1on1の目的ややり方がわからない」、部下側からは「1on1が苦痛、不要」というような声が多く寄せられます。

なぜこのようなことが起きるのでしょうか?
それは、1on1の目的や本質が十分に理解されていないことが一因ではないか、と私は考えています。

1on1の目的は、部下の内省を促進し、成長を支援することですが、単なる「面談」と誤解している人が多い印象があります。
そこで、まずは「1on1」 と「面談」の違いに触れておきたいと思います。

2それ、面談になっていませんか?

(1) コミュニケーションには“縦と横”がある?

堀井

端的に言うと、面談と1on1では、次のような違いがあります。

 

  • 面談:成果責任を果たしていくことが目的。上司主体で指示を出したり進捗を確認したりする「縦方向のコミュニケーション」が中心になる。
  • 1on1:部下の育成が目的。部下が自分の思考を整理し、上司は対話を通して、その手助けをする「横方向のコミュニケーション」が中心になる。

1on1ミーティングは、「部下のための時間」です。部下が「自分はどう感じたか」「何に気づいたか」「どういうキャリアを描きたいか」といった振り返り(内省)を行い、それを支援することが、上司の役割です。

(2) なぜ“面談”ではうまくいかないのか?

堀井

「でも、成果を出さなくてはいけないし、指示や進捗確認をする縦のコミュニケーションだけで十分では?」と思った方もいるかもしれません。確かに、成果責任を果たすことは大切です。

 

しかし、終身雇用が過去のものとなり、業務を通じた成長を重視する若手社員が多い今の時代、「いいからやりなさい」と言うだけでは人は動きません。

・「なぜこの仕事をするのか?」といった目的のすり合わせ

・「ここを頑張っていますね」といった観察とフィードバック

・「課題を解決するためにはどうしたらいいと思う?」といった質問

こうした横方向のコミュニケーションがないと、部下は「見てくれていない」「理解されていない」と感じます。その結果として、モチベーションが下がり、パフォーマンスも下がってしまうのです。

 

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3部下の成長が止まる“見落としがちな2つの工程”

~対話を通じて、部下の内省を支援する1on1。1on1には個人が成長するだけでなく、組織へのエンゲージメントを高める効果もあります~

(1) 「振り返る」「語る」が不足していませんか?

堀井

人の成長には、5つのステップがあります。

 

【成長の5ステップ】

学ぶ

実践する

振り返る

語る

⑤磨き上げる

多くの企業は「学ぶ」「実践する」ということには力を入れています。研修を実施し、現場で経験を積ませる、ということには熱心です。
ところが、「振り返る」「語る」は圧倒的に足りていません。
頭の中で振り返っている人は多いでしょう。しかし、それを言葉にして語り合う習慣が、日本の企業にはあまりないのです。
「忙しくて語り合う時間なんてない」という声を本当によく聞くのですが、もったいないことだと思います。

人は学び、実践することで成長します。そして振り返り、語ることで、その成長が加速するのです。その結果、成長の最終段階である「磨き上げる」に進むことができる。
実践したことを振り返る機会をつくり、それを語り合うことで成長につなげる。これが1on1の本質なのです。

(2) 自律的人材を育てる「言語化」とは?

堀井

「自律的な人材が欲しい」と多くの企業が言います。

自律的人材、つまり、自分で考えて行動できる人材になるには、少なくとも、何をどう考えたらいいのかがわかっていなければなりません。

 

この点でも、1on1の「振り返る」「語る」というステップは役に立ちます。最近よく聞く言い方を使うと、「言語化」が起きるからです。

 

「このプロジェクトで自分は何を学んだのか」「うまくいった理由は何だったのか」「次はどうすればもっと良くなるのか」

こうしたことを言葉にすることで、思考が整理され、次の行動がクリアになります。

この言語化の習慣を身につけることで、自分で考え、行動できる人材へと成長していくのです。

4今日から実践!1on1の3ステップ

堀井

では、効果的な1on1を実践するには、何が必要なのでしょうか。

3つのポイントをお伝えします。

  • ポイント1:話し手が「自分の話を聴いてもらえている」と感じられる状態をつくる1on1の基本は傾聴です。

    話は最後まで聴き、表情や反応を見ながら、部下が考えるための沈黙の時間も大切にしましょう。

  • ポイント2:部下を主語にする対話を通じて「あなたはどう思った?」「そんな気づきがあったんだね」「じゃあ、次どうしたらいいと思う?」といった問いかけを行い、部下が自分で考え、次の行動につなげられるような時間にしましょう。
  • ポイント3:上司自身が内省(振り返り)の大切さを理解している自己内省ができていない上司は、部下の内省も促せません。

    ・体験を振り返り、うまくいった点、うまくいかなかった点、その要因は何か

    ・自分はどのような場面でワクワクするのか

    ・自分はどのような価値観で仕事をしているのか

    上司自身がこうしたことを言語化できることが重要です。

     

    そうでなければ、部下にどういう問いを投げかければいいのか、どういう観点で話を聴けばいいのかがわからないからです。

日本マンパワー岩下

弊社のeラーニングでは、上司自身が内省を体験するワークを重視しています。自ら振り返りを体験することで、「なるほど、こういうことか」と腹落ちし、部下との1on1でも自然な問いかけができるようになります。

日本マンパワー eラーニング担当者より

5前編のまとめ

堀井

ここまで、1on1が形骸化する理由と、1on1の本質についてお話ししてきました。しかし、1on1はあくまでツールです。大切なのは、相手の可能性を引き出し、強みを活かしながら行動につなげてもらうこと。そのためのツールとして、1on1を使ってほしいのです。

 

そして、1on1は実践して身につくもの。eラーニングなどを通して、まずは具体的なイメージを持つのも効果的です。

 

今回監修したeラーニングのデモンストレーションでは、NGパターン、OKパターン、こんなことを言われたらどうする?など、実際の場面を再現しました。

「ああ、こういうことか」と具体的なイメージが湧き、1on1を実践するための一歩になると思います。

 

さらに後編では、上司自身の内省の重要性、1on1を通じて生まれた具体的な変化の事例、そして組織全体が得られる価値について詳しくお話しします。

【後編へ続く】

Eラーニング紹介章へのバナー

 

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