“部下のための時間”が成果を変える 1on1の本質と実践方法【後編】
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2025.12.16
前編に続き、1on1エヴァンジェリストとして活躍する堀井耕策氏が、1on1を通じて部下の可能性を引き出す具体的な方法と、組織が得られる価値を語ります。
後編の読みどころ
・1on1の雑談化・進捗確認化から脱却するポイント
・個人と組織に起きる変化の全体像
1上司の内省なくして部下の成長なし
堀井氏へのインタビュー後編では、多くのマネージャーから寄せられる「1on1の具体的なやり方がわからない」という声にお応えし、1on1の手法などを紹介していきます。
(1) 育成された経験がないマネージャーたち
堀井
「どうやって部下を育成すればいいのかわからない」。私の研修に参加するマネージャーの方々から度々聞く言葉です。なぜわからないのか。今のマネージャーたちは、育成された経験がないからです。
これまでの日本は、「指導すればできた」という時代でした。決まったやり方があって、その通りやれば成果が出た。でも今は違います。多様性が広がり、答えは一つではありません。
また、働くことに対する価値観も人によって様々で、外発的動機づけよりも内発的動機づけがより重要になっています。だからこそ、部下が自分で考え、対話をしながら答えを模索していく必要があるのです。
しかし多くのマネージャーは「君はどう思う?」と聞かれて成長してきてはいません。だから、部下にどう問いかければいいのかわからないのです。
(2) 自己内省力は“経験学習サイクル”で鍛えよ
堀井
だからこそ、まず上司自身が自己内省(※)を行う必要があります。
※自己内省 自分の体験や経験を振り返り、自己の価値や判断基準を言語化すること
前編でもお話ししましたが、自己内省の経験が不足している上司は、部下の内省を十分に促すことはできません。
今回、監修させていただいたeラーニングでは、自己内省を体験するワークを盛り込んでいます。この自己内省のワークは、教育理論家のデビッド・コルブ氏が提唱した「経験学習サイクル」をベースにしたもので、次の図のような流れで進めます。

まず、日々の業務で「経験」したことについて「内省」を行います。これはワークシートを使って行動を振り返り、点数をつけます。この点数は自己評価であり、何点でも構いません。重要なのは、自分がどう感じたかを可視化することです。
そして、「何ができたのか」「何ができなかったのか」を具体的に書き出し、それぞれの要因を考えます。成功要因・失敗要因を言語化することで、頭の中が整理され、次の行動が見えやすくなります。これが「教訓」にあたります。
そして「試行」の段階に移り、次にやることを決めていきます。
これを繰り返すことで、自分の価値観が明確になり、判断基準も磨かれていきます。
このように、経験学習のサイクルを体得し、自身の価値観や判断基準を明確化することが、1on1にも活きてくるのです。
2事例で納得!~ヤフー人事が教えた1on1のポイント~
効果的な1on1を実施すると組織にどのような変化が生まれるのでしょうか。堀井氏の1on1支援事例の1つをストーリー形式で再現しました。
ヤフーで人事担当だった時、育成方法がわからず悩むエンジニア部門の部長に、
1on1の進め方についてアドバイスをした事例
私はエンジニア出身ということもあって、モノづくりは好きなのですが、人のマネジメントは苦手で・・・。育成のやり方もよくわからなくて、つい指導ばかりしてしまうんです。
なるほど。指導と育成は違いますよね。育成は「引き出す」ことです。そのためには、まず部下の方をよく観察することが大切ですよね。
観察ですか。でも、どういう観点で観察すればいいのかがわからないんです。
それなら、こんなふうに部下の方のスキルをグラフ化してみてはどうでしょう。横軸に項目、縦軸にレベルを取って、見える化するんです。

たとえば、「自己理解」は自分の強みや弱み、ワクワクすることを言語化できているか。コミュニケーション能力、俯瞰力などの「ビジネス基礎スキル」はどの程度あるか。そして「専門スキル」や「マネジメント力」はどうかなど、目で見えるようにグラフにしてみるんです。
なるほど、グラフで見ると、何ができていて何ができていないのかわかりやすいですね!
「スキルを上げなさい」と言われるだけでは、部下の方は何をどう伸ばせばいいかわかりませんよね。でも、グラフで見える化すれば、「この観点で見ると、あなたはここが強い。そしてここを伸ばすと、もっと良くなると思うけれど、どう思う?」と具体的にアドバイスできるようになります。
確かに、それなら部下も理解しやすいですね。
そうなんです。私から見えている状態を示しながら対話する。これが、ポイントなんです。
このエンジニア部門の部長は、その後、グラフを使いながら部下との1on1を実践。
そのやり方を続けたところ、部部署内の育成が進み、「あの人は部下の育成スキルが高い」と周囲から高評価されるようになったそうです。
プロモーションイベントの運営・実務を担当。趣味は読書といけばな。最近、涙もろいのが悩みです。
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