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イベントレポート「キャリア探究力開発を考えるトークセッション&交流会」(後編)

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2023.7.21

日本マンパワーは、2022年よりキャリア支援事業準備室を立ち上げ、高等学校の現場を主な対象とした「キャリア探究力開発サービス」、高等学校・高校生向けキャリア教育プログラム企画開発・講師派遣、探究学習の仕組みづくり支援、支援者養成セミナー等、キャリア支援のノウハウを活かした体系的なサポートを行っています。
この取り組みの一環で、2023年6月に「キャリア探究力開発を考えるトークセッション&交流会」を開催しました。
本イベントでは、高校現場のキャリア支援者を養成する「キャリア探究力開発セミナー」担当講師である山内雅惠先生が登壇しました。トークセッションでは日本マンパワーの考えるキャリア探究力とは何かを紹介。また、キャリア支援者として近年の高校現場を取り巻く環境変化をどのように考え、支援を実践されているのかについて、山内先生よりお話いただきました。交流会ではトークセッションの話を受けて、参加者を交えた情報交換を行いました。
本レポートでは、このイベントの内容を基に編集・再構成してお届けいたします。ここからは、その後編です。
キャリア探究力を高めていくために
~高校現場を取り巻く環境変化から感じていること~ (山内雅惠先生より)

4.「生きる力」を身につける
~“経験”として捉え、自身と向き合っていくことで身についていく~
文部科学省が提唱する「生きる力」について、キャリア支援者としても、とても大事な力であると感じています。現在若年者、高校生も莫大な情報をYouTubeまたはSNS等いろんなものを見て取り入れているんですね。
一方で、現場で生徒達とかかわっていますと、取り入れた情報を実際に自分で試してみるとか、行動するというところまでつなげているかというと、なかなかできていないのかなとも感じています。
知識・情報だけではなくて、それらを言葉などで表現、発揮するような体験を伴わせること、また体験から何を感じ、考えたのか、“経験”※、として捉え、自身と向き合っていくこと(内省すること)で、はじめて身についていく力なのかなと感じています。
※経験=事柄と事柄に伴う気持ちや考えを伴ったもの

5.「総合型選抜入試」その先へ向けて
~何のために何を学ぶのか、「自分ごと化」していくことが大切~
―大学支援の現場から
現在、大学でもキャリア支援に携わっています。先日キャリア教育の授業の一環で、大学3年生向けに内定が決まった4年生に就活体験談を話してもらう機会を設けました。体験談を通して3年生が自分の将来を見つめ、自分ごととして就活や人生を考える時間とすることがねらいでした。その場で3年生から4年生へ質問が飛び交うのですが、「学部で興味のある学びがなかなかない」、「仕事でやりたいことがない/見つからない」、「自分がこれから大学生活をどう過ごしていったらいいか分からない」という内容がその中心でした。その時、何のために、何を学ぶためにこの大学・学部へ通うのか、学んだことを社会とどう繋げていくのか、それらを「自分ごと化」していくことを高校生の段階から養っていくことの必要性を改めて感じたのです。
総合型選抜入試にあっても、単にアドミッションポリシーの求める学生像に自分が併せていくのではなく、志望校学部において、何のために何を学びたいかを考えること、自己分析により自己理解を深めていくことが大事だと考えています。
キャリア理論家の先生(マーク・L・サビカス)も「今までは仕事が人を使っていたと。でもこれからは自分が実現したいことに向けてその仕事を使うんだと、そういう時代にならなきゃいけない」という趣旨の話をされていまして、まさにキャリア教育にも繋がることかなと感じます。自分が将来、社会で自己実現を図るため、その通過点として何を学ぶのかという観点で大学を選んでいくということも、すごく大事なのかなと考えています。そのため、自己分析についても、単に自分が今好きなこと・得意なことというレベルではなく、進路の先にあるキャリア(自身の人生)に向き合って自分ごと化していく、言語化していくことが大切になってくると感じます。
―アウトプット・言語化について
自分ごと化、言語化する力を高めていくために、私は授業の中で、アウトプットする時間を多くもつようにしています。例えば最近話題になったニュースを取り上げて、「皆さんだったらどう考えますか?」と問いかけ、グループワークやディスカッション、発表をしてもらいます。授業終了時に毎回。今日の感想等、リアクションペーパーを書いてもらうことも行っています。最初は話さない学生も、他者との関わりの中で、徐々に自分と他者との違いを知り、またその時違うなと思ったことを今ちょっと紙に書いてみようかとか、またはちょっと話してみましょうかとか、そんな機会を積み上げていくようにしています。最近はコミュニケーション媒体がSNS中心に変化していく中で、直接話さなくても、あるいは考えていることを文章化(言語化)しなくても、スタンプやリアクション等でコミュニケーションがとれてしまう訳ですが、一方でスタンプ一つで自分の気持ちをつぶさに言語化できるということはそうそうできないと思うんです。ですので、私はやはり先ほどのアウトプットの機会をもつこと、そして授業の最後には今日のグループワークは自分にとってどんな意味があったのかということを書いてもらうとか、何か常に外の刺激と、自分の内にあるちょっとくすぶっている、揺らぐ思いをも踏まえて言語化していく。そんな機会から訓練していくことが必要なのかなという風に感じています。

6.「総合的な探究の時間」必修化
~「自分ごと化」できる経験を積み、広げる~
自らの在り方や生き方を考える機会が必修科目として導入されたことは私自身良いことだと感じています。
生徒は探究の過程を通して自分自身と向き合うことで、例えば自分はこんなものの見方や考え方をよしとしていたのか、こんなことにも興味があったんだ等、自己発見にも繋がります。
私自身今後は「自律性」を高めることがすごく必要になると考えています。そのためには「総合的な探究の時間」で得た学びをその科目内で完結させるのではなく、他の科目や高校生活、ひいては自身のプライベートに至るまで、外の世界と繋げていったり、横断的にはたらかせていくようにする。そのように「自分ごと化」できる範囲を広げていくことが大切です。
オックスフォード大学の論文によると、20年後には今ある仕事が47%なくなるという結論が導き出されています。ここから今後ますます自分を取り巻く社会、環境変化のスピードは増していくと考えています。そんな時代を生きていく若者たちはやはり自分の生き方というものに、しっかり軸を持っていかないと、その変化へ流されてしまう(適応しきれない)状態になってしまうかもしれません。
軸をもつためには、ただ単に目の前の課題(事柄)を解決して終わり、ではなく、その過程も含めた時間の中で、自分の考えを熟成していくこと、これが大事かなと思っています。自分の考えを熟成していくために、まず必要なことは、他者と関わることにあると思います。関わりを通して、自分だけではなく、先生や他のクラスメイトがどんな風に感じ、考えているのか、またその考えの背景には何がはたらいているのだろうかと興味関心を伴うことが大切です。興味関心を持って人の意見を聞くその先には、自分と違う考えがあることを知り、受け入れることで考え方に幅が出てくる。幅が出てくることは多様な考えを許容できることにもつながり、それによって自分の視野が広がっていく、そんな展開があるのかなと思います。
それは先ほど「生きる力」、変化の激しい時代においても翻弄されずに生き抜いていくということにもつながると思います。
探究の授業を設計するにあたって大切にしているところは大きく2点あります。
1点目は私が今担当している授業ではどんなテーマで半年ないし1年間進めていくのかをまず伝え、そのテーマに基づきどんな力を身につけていてほしいのか到達目標ですね、そこへ向かうためにどんな道筋で探究していくのか、【全体像を示す、捉えられるようにする】事を大切にしています。
私自身もこれまで失敗をしているのですが、やることだけを提示する、今日はこれとこれをやろうとだけ伝えると、ここでやることにいったいどんな能力を伸ばすことへつながるのか、どんなねらいで取り組むのかという部分が薄れてしまって、いわゆる「手段が目的化」する状態を生んでしまいます。生徒達に探究のプロセスを意味ある過程として、自分ごととして取り組んでもらうためにも、授業の初回に、そして定期的に全体像を把握できる時間を設けるようにしています。
2点目は【生徒が成長を実感できる時間を設ける】という事です。先ほど総合型選抜で話したアウトプットとも重複しますが、やりっぱなしにさせないで、必ず授業の各回で思ったことや考えたことを紙に書かせる、そして更にグループメンバーで共有する事を毎回行っています。そして最終回には初回に書いたそれと現在を比較してもらい、成長度合いを数字で表してもらうようにしています。そうすることで自分はこの授業を通してこんな事も考えられるようになった等、成長の実感へつながっています。

7.イベント後記~登壇者の声~
少子高齢化が加速し、環境の変化により学びや価値観も多様化しています。この予測不能な世の中で生きていく生徒たちが、自分の意志で自らの進路を選択していくことはますます難しくなるでしょう。一方で「自律型人材」が求められる時代でもあります。あふれる情報の中から自分にとって必要な情報を取捨選択し、その情報に翻弄されるのではなく、自分の軸をもって意思決定できるように、キャリア探究力を高める支援をしていくことがこれからのキャリア支援者としての私たちの役割だと思います。
※本イベント掲載内容は登壇者自身の実践による私見を含みます。

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