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キャリこれ

株式会社ゆめみの皆さんに「DAO(分散型自律組織)で働くリアル」を聞いてみた(後編)

インタビュー

2023.9.4

ブロックチェーンやWeb3といったテクノロジーの変化と共に、特定の管理者や統率者なしに組織の意思決定やプロジェクトを推進する「DAO(分散型自律組織)」という組織形態への注目が高まっています。では、そうしたあり方はどのように運用され、そこで働く人達は何を考えているのでしょうか。2018年10月に「アジャイル組織宣言」を発表し、DAO型の組織を稼働させ、「全員CEO」「日本一勉強する企業」といった斬新な取り組みでも注目を集めている株式会社ゆめみのリアルを取材させていただきました。お話をお聞きしたのは、同社にキャリアとメンタルヘルスの悩みに寄り添う「ゆめみ保健室」を設立した佐久間史子さんと、「社員全員でアウトプットする」組織文化づくりをリードする広報担当の妹尾福太郎さん。「ポジティブでもネガティブでも、会社批判でもOK」と言葉通り、ぶっちゃけで語ってくださいました。
ここからは、その後編です。

5.「アウトプットする文化」をどう作るか?
酒井:
全員がアウトプットする文化を推奨されてますが、このあたりはどういう趣旨でどのようなことをされているのか、お聞かせ願えますか?
福太郎:
今は「note」とエンジニアブログ「Qiita(キータ)」を使った発信が盛んです。もともと、ゆめみは自前のオウンドメディアでテックブログを展開していたのですが、息切れしちゃったんです。そこで方針転換して外部のオープンプラットフォームを使って発信していこうということにして、それがインプットとアウトプットを推奨する「勉強し放題」制度に繋がっていくわけです。どういうことかというと、人目に触れる場所で発信することに対して「それが素晴らしいことなんだよ」と価値を認めて、社員全員が発信するよう方向づけることで、エンジニア系のブログでカリスマ的な支持を集める書き手が生まれてきたり、既にインフルエンサーとして影響力を持つエンジニアの書き手さんが入社してくれたりといった副次的な効果も生まれました。
そうした仕掛けや引き寄せたものが重なって、Qiitaのランキングで安定的にトップランクに入る状態になりました。要は「オープンの場で発信する人が偉い」というカルチャーを作っていったわけです。
酒井:
発信については「ナラティブ」をかなり重視されていますが、どのような内容や意図なんでしょうか?
福太郎:
ただ告知とか宣伝を拡散しても共感を得られるわけじゃないよね、という考え方がベースにあります。ポジティブでもネガティブでも会社批判も歓迎、とにかく1人ひとりが自分の視点、個人の目線でどう感じているか、どう考えてるかの本音を自分語りするということですね。それを発信の方針にして全社的に啓蒙しているのがこの2年間です。
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6.「キャリア迷子・組織迷子」と「ゆめみ保健室」
酒井:
そういう組織をセンターオブエクセレンスで支えていらっしゃると思いますが、改めて保健室を立ち上げられた問題意識や、その中で特にキャリアコンサルタントがどういう役割を果たしているのかをお話しいただけますか?
佐久間:
私は、採用もしていたのですが、人を採用するということは、その人の人生つまりキャリアを預かることだということをすごく感じたんです。ゆめみに入ってもらったあと、ここでどのようにキャリアを積んでもらったらいいのか、真剣に考えました。
酒井:
既に自分のチームにいらっしゃる方々のキャリアも考えましたか?
佐久間:
もちろんです!消極的な方が多くて、自分からアピールしないんです。アピールというより自分の強みを知らない方が多い。そういった方々の強みを引き出すためには専門的な知識を学ばないといけないと思い、キャリアコンサルタントを取ろうと思いました。説明会を受けて、これだ!と思いましたね。でも、いざ勉強を始めたら激務なので大変でした。泣きながら勉強をして取ったという感覚です。でも、合格したときにみんながすごく喜んでくれたんですよ。
合格後に、チーム以外の方から相談がありました。組織が変わる中で、「自分がどこにいるかわからない」という相談が寄せられるようになりました。以前はチャレンジシートに書くことでめざす目標を明確にできたのですが、突然それがなくなって、「自律」だとか「自分で自分の強みを評価しよう」と言われても、どうしていいかわからないという社員がいたわけです。要は「キャリア迷子、組織迷子」ですよね。なので、これじゃいけない、専門的なチームを作ろうと思ったんです。
酒井:
そして代表に起案されたんですね?
佐久間:
はい、2021年10月中旬だったと思います、代表に「相談室を作りたいです」と必要性を説明したら「いいね」と即断即決でした。意思決定がこんなに速い人いるんだ!と驚きました。一方、コロナ禍で、フルリモートでの勤務になり社員の様子が見えない中で、メンタル不調が多いな、と感じたんです。総務に聞いたら「多いです」と。なので、それも相談室で引き受けることにしました。従業員支援のカウンセリングに特化したEAPメンタルヘルスカウンセラー養成講座に通い始めました。あとあと気づいたのですが、キャリアとメンタルヘルスの悩みは密接であるということ。従業員の相談はこの2つに対応できないと難しいと思います。

7.「ゆめみ保健室」の実践
酒井:
「保健室」というネーミングを考えられた理由は何ですか?
佐久間:
相談室やカウンセリングルームにしてしまうとちょっと抵抗あるだろうなと思ったんです。自分が学生の時に、何となく行っていたのが保健室で、行くと何でも喋ってたんですよね。この「ゆめみ保健室」も気軽に来てもらえたらいいなと思ってつけました。
また、「ゆめみ」という会社名が好きなんです。ひらがなの社名が保健室と合わせるとバランスがちょうど良いので、「ゆめみ保健室」にしました。
代表も「『ゆめみ保健室』いいね」と気に入ってくれました。最初は定期面談で利用する方が大半だろうなと思っていたのですが、そんなことはなかったです。リモートで保健室へ入っていくのが見えないから利用しやすいというところがあるのかもしれません。
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相談を重ねる中で「やはりキャリアとメンタルヘルスは切り離せないな」と思いました。過重労働でも必ずしもメンタルヘルス不調にはならないということがわかったんです。むしろ自分軸があって、キャリアプランもしっかり持っている人はメンタルヘルス不調にはなりづらいようです。その一方、キャリアプランや自分軸がない方は何かあると自信を失ってしまったり…そういったことが重なるとメンタルヘルス不調に陥りやすいと感じました。
酒井:
そうした方たちにどのように対応されましたか?
佐久間:
うちの社員の特徴はセミナーには来ないけど面談にはきちんと来るんです。他の企業の方に聞くと面談来ない人もいるようですが、ゆめみの社員はきちんと来てくれます。「これだ」と思って、今年から実験的に入社2年目になる社員向けにキャリアカウンセリングを行いました。カウンセリングの中でキャリアの棚卸やプランを立ててもらって、その人の強みや大切にしていることを書いたシートをひとりひとりに渡しました。
そのカウンセリングは外部のキャリアコンサルタントにお願いをしています。外部の専門家による関わりを通じて、カウンセリングの選択肢を幅広く持ってもらいたいという想いがあります。外部だからこそ話せることもあると思っています。
酒井:
他の企業の方へのメッセージはありますか?
佐久間:
私は、各企業に保健室があったらいいと思っています。企業内キャリアコンサルタントをやっているとメンタルヘルスの不調にぶつかりますので、キャリアとメンタルの二つの専門性を持つことはすごく重要だと思っています。特に休職されている方の不調の原因は仕事の悩みから来ていることもあるので、メンタル面が落ち着いた後のキャリア面をケアする人が必要になります。
私は保健室というのは企業における1つのプロジェクトだと思っています。なので、PDCAを回していますし、ツールを駆使して可視化しています。欲しいツールは社内の方に作ってもらっています。
「ITとキャリア」「ITとメンタル」を結び付けるところが我が社の強みですね。数字は嘘をつかないので。多くのキャリアコンサルタントの方々は、カウンセリングはできるけれどカルテを作成したり資料を数値化したりすることなどは行っていないと思いますが、多くの数字・データが溢れているのに、そこを拾って可視化しないのは勿体ないと思います。なので、このノウハウを今度他の企業にも広めていきたい、という思いもあります。
酒井:
いま、多くの企業がDXやテクノロジーの導入を急ピッチで進めていますが、お二人のお話をお聞きして、それ以前に、どのようなカルチャーをつくっていくのか、社員をどのように見て行くのかを考えることの重要性を、改めて感じました。同時に、事業戦略の転換や組織改編に伴い自律を迫られてキャリアの迷子になってしまう状況が生じているであろう企業人事の皆さんにも、たくさんの示唆をいただきました。ぶっちゃけてお話いただき、本当にありがとうございました。
佐久間・福太郎:
ありがとうございました。

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