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人的資本経営は「社員感情」の細部に宿る(中編)

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2023.10.3

ここからは、曽山さんとの対話の内容をご紹介いたします。
まずは代表2名からの質問に、曽山さんに回答していただきました。質問者は、日本マンパワーで人的資本経営プロジェクトのリーダーを務める依田哲司とキャリアのこれから研究所プロデューサー・酒井章氏です。

1.インナーコミュニケーションについて
酒井:
サイバーエージェントさんはコミュニケーション、特にインナーコミュニケーションをすごく大事にしていらっしゃると感じています。一つ一つのネーミングなどもすごく工夫されていますよね。インナーコミュニケーションについてはどのように考えていらっしゃいますか?
曽山さん(以下敬称略):
インナーコミュニケーションの基本的な考え方は、社員が社長や役員に「大事にしてもらっている」ということを話すことによって体感する、ということです。つまり「信頼関係は対話を通じて動いていく」ということです。したがって、対話の頻度があった上での質が極めて重要、というのが一つ目のポイントです。また、コミュニケーションという点では、「短い言葉で多くの人を動かす」ことが、知的労働においては極めて重要です。長い話の人はみんな嫌いですよね。短い時間でいかに意味があるものを端的に伝えるかが大事だと考えています。
酒井:
曽山さんをはじめとして役員の皆さんが社員の方々とのコミュニケーションを密にとっていらっしゃるという話をされていましたが、その他に「対話」という面で具体的に工夫していらっしゃることはありますか?
曽山:
大事なことは、あした会議に代表される「組織を動かしているという実感、貢献実感」です。自分が組織に関与できているんだということを感じれば感じるほど、組織に対してもっと貢献しようと思います。なので、組織改善や組織の新しい動きに対してどれだけ意見を言えるか、それに対してフィードバックがもらえるか、つまり「言えること」「フィードバック」のサイクルがどれだけあるかがすごく重要なポイントだと思います。

2.経営と人事の連携、CHROの役割

曽山さんに質問する酒井氏
酒井:
これからますます経営と人事の連携が必要になってくると言われていますが、曽山さんからご覧になって、「経営と人事の連携」とはどのようなことを意味するでしょうか?
曽山:
理想的には「経営と人事の一体化」です。なぜかというと経営戦略が決まって初めて人事が連動してくるので、経営と人事は直結していればいるほど良いのです。逆に言えば人事は経営と同じ言葉を話せないといけないので、私も経営の情報に関する理解と自分だったらどうするかを常に意識しています。
酒井:
人的資本経営の中で、CHROのポジションが増えていますが、曽山さんからご覧になって、CHROとはどういう役割を果たしたら良いと思いますか?
曽山:
CHROの役割は「“経営人事課題”を見つけて解決すること」だと私は定義しています。“経営人事課題”というのは私の造語になりますが、3年後の売上計画や会社のビジョンなどがまずあって、未来の理想像から考えると、今に対してギャップがあるわけです。そうしたギャップを列挙した上で、その中でも自分たちの会社の未来に絶対に足りないことは何なのかを数個に絞っていきます。これが“経営人事課題”です。
経営課題の中でも人事の課題を“経営人事課題”と呼んで、それが何であるかを自分なりに意見を持って考えて、経営陣と合意することが必要になります。それによって初めて、業績貢献の一歩ができたという形になるので、経営人事課題を特定することがCHROの役割になります。なので、経営陣に経営人事課題を提言し、解決していくことをずっとやり続けて成果を出している方はCHROとしてすごい方だなと思っています。

3.曽山さんにとって、人的資本経営とは?
酒井:
曽山さんからご覧になって「人的資本経営」をどのように定義されるでしょうか?
曽山:
私は人的資本経営という言葉がこれだけ広がり、人事に注目が集まったということは、日本社会における極めて大きな変革点だと思っています。その上で、私にとって人的資本経営は何かと言えば「人と組織で業績を上げること」、これだけです。未来ある若い人のためにも、成長し続けるということは我々先輩の義務だと考えています。

4キャリアのスポンサーシップ、組織と社員が共に成長していく基盤づくり
依田:
日本マンパワーはキャリアをずっとテーマに扱っている会社です。個人がキャリア自律をしてキャリアのオーナーシップを持とうといったことをやって来ましたが、最近は「キャリアのスポンサーシップ」という言い方で組織開発などに力を入れ始めています。というのも、スポンサー=会社や組織風土が変わらなくてはキャリア自律などできない、と考えるからです。そして、その際に大事なのは「対話」だと思います。
また、「軸の明確化」という点では、私どもは、「共成基盤」=共に成長していく基盤を作っていくことが大事だと考え、「キャリアのオーナーシップ」「キャリアのスポンサーシップ」、「共に成長していく基盤」を作っていくことの大切さを社外・社内に打ち出しています。
曽山:
「キャリアのスポンサーシップ」や「共生基盤」とセットになっていることはすごく大事だと感じました。社員でビジョンを持っている人や言語化できている人はそんなに多くありません。ビジョンが大事なのは間違いありませんが、言葉にするのは本当に難しい。まず「自律を応援します」と言った上で、スポンサーシップや共成基盤とセットで支えるという考え方は素晴らしいと思います。
曽山さんに質問する弊社依田
依田:
ありがとうございます。今回「楽しくなければ」というテーマを設定していますが、楽しいっていう価値観や感じ方がいろいろ違うと思っています。私は落語をやったり、新しいアイディアを出すのが好きだったりしますが、一方で職人的に目の前の仕事をこつこつやる方が楽しい人もいます。サイバーエージェントさんの「楽しくなければ会社じゃない」の“楽しい”という部分はどのように咀嚼をされて伝えられていますか?
曽山:
“楽しい”ということについては、私は「感情報酬」という言葉を設定して使っています。報酬は大きく「金銭報酬」と「感情報酬」の二つがあると思っています。金銭報酬は、ストックオプションであれ手当であれ、お金には変わりがないので、やり方もそんなに変わりません。しかし感情報酬は個別性が極めて高いんです。なぜなら人間である以上、一人一人異なる感情を持っているからです。それを理解するために、対話が必要になります。どのような仕事が面白いのか、何に情熱を注げるのか、今までどんな苦労してどう面白かったのか。そうした対話を通じて本人の感情のスイッチが見つかることがあります。
◆後編は、こちら

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