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ここから自ら気づき、学び、実践するリーダーが生まれる-鹿島 KX-LABの挑戦-(後編)

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連載記事

2023.3.5

社会人や企業人の学びの潮流を俯瞰すると共に、新たな学びに挑戦する現場をレポートすることで、これからの働き方やキャリアの道筋を描く上で本質的に考えるべきことの解明を目指すシリーズ「学びのこれから」。
第6回は、鹿島建設株式会社(鹿島)が次世代リーダー育成を主な目的として立ち上げた施設「KX-LAB」(ケーエックスラボ)について、同社人事部の北野正一郎さんにお話をお聞きました。
後編をお届けします!
●目次 サイトアップ時、目次から各章へのリンクを実装
【前編】こちら
1.鹿島の人材育成・キャリア体系について
2.KX-LAB 構想やプログラムについて
3.KX-LAB 効果と課題感
【後編】
4.KX-LABと人的資本経営
5.KX-LAB 今後の展望等
6.KX-LABのプログラム企画にも活かされている北野さんの留学時の気づき
4.KX-LABと人的資本経営

Q16: 人的資本経営も本格化しているので、KX-LABへの期待も高まりそうですね。

KX-LAB設立の経緯も基本的には人的資本経営と同じ発想に立っていると思います。
ここで行っている「気づき」や「学び」のためのイベント、ワークショップなども、会社と社員が双方向でやり取りしながら企画していくべきだと思っています。各自の持続的な自己研鑽につなげていくと共に、社内のコミュニケーションを活発化させ、個々のナレッジをきちんとシェアしていくような基盤ができていくと、今後の会社の競争力強化に繋がるでしょう。そういった取組みが「人的資本経営」なのだと思います。
また、当社では3年前にタレントマネジメントシステムを導入しましたが、これも同じく人的資本経営の考え方に沿ったものだと思います。システムには、社員自身のキャリア目標を登録する仕組みを導入しています。各自がそれを定期的にアップデートし、目標に向かって何をすべきか考える仕組みとして整備しつつあります。

Q17: まさにKX-LABでされていることが、鹿島ならではの人的資本経営の取り組みだということですね

そうでありたいですね。ただ、学びの成果に関しては、指標として計測できるものがなかなか無いのが課題です。例えば、1人当たりの研修費用などを算出することはできますが、研修の成果というものは、なかなか客観的に計測しにくいですしね。

Q18: 北野さんからご覧になって、鹿島ならではの人的資本経営とはどのようなものだと思われますか?

これからの時代、会社とそこで働く人たちがWin-Winの関係にならねばなりません。鹿島に関わる人たちが、やりがいを持って働き、成果を出すことで、会社も発展するし本人としても成長機会になる。そのようなポジティブなループが廻っていくということだと思います。
5.KX-LAB 今後の展望等

Q19: 今後、KX-LABはどのような場所になっていったら良いと思われますか?

リーダー層や経営層が、気軽に立ち寄るサードプレイスと位置付けられていくことが重要だと思います。コロナ禍によって、集まることが難しい時期が続いていたので、今春からギアを上げていきたいですね。

Q20: KX-LABがグローバルの交流拠点になっても良いですね。

それは、まさに構想段階で考えていたことですが、コロナによって海外との往来が途絶えたことで中断を余儀なくされていました。今年からはいろいろ取り組みたい、と思っています。

Q21:これからの社会人の学びは、どのようになっていったら良いと思われますか?

ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットンさんも言っているように、人生100年時代になり、場合によっては生涯働き続けるような世の中になる中で、今までにはなかった学び方や働き方が必要になっていくでしょう。本当に正解がない時代だと思います。
「学び」だけでなく、「気づき」や「実践」をどうトータルで考えるか。まさにどう学ぶかは「どう働いていくのか」とセットですね。私自身も中長期的に何歳まで働くのかを模索中です。

Q22: 最後に、学びや気づきの在り方が変わっていく中で、それを提供する研修会社に期待されるものとは何だと思われますか?

変化の予兆のようなものについて対話しながら、一緒にプログラムづくりをさせて頂きたいと思います。お手持ちのパッケージをそのままあてがうのではなく、時々の変化や個社ごとの事情にそって上手にアレンジする、ということも大事ですね。我々も正解がない中でやっていますので、「そもそも」という最上流の段階のところからご相談させていただきたいと思います。
また、研修会社さんは私達が全く関わらない多様な業種の方々とつながっているからこそ、当社に足りないものについての知見を頂きたいですね。
個社だけではなく、他のクライアントさんとの組み合わせなどもあるかもしれません。社内だけの研修で閉じてしまうと、どうしても社員同士がお互いの暗黙の了解の中で何となく片付けてしまうことがありますが、そこに他社の方が入ると、刺激にもなるのではないか、と思います。
—このKX-LABで他流試合をやって、色々な会社の人たちが来ることで新しい交流がどんどん生まれるようになると良いですね。「KX-LABに来ると他流試合の機会を得られる」となると本当に良いですね!
6.KX-LABのプログラム企画にも活かされている北野さんの留学時の気づき
鹿島建設株式会社
人事部 北野正一郎さんプロフィール
1990年代半ば、鹿島に入社。最初の数年は現場の事務管理を担当、その後、人事部や不動産開発部門に在籍した後、40歳を過ぎてから海外留学しMBAを取得。帰国後は、本社で戦略を企画立案するチームに所属、主にヒトに関するテーマや課題に取り組む中で、KX-LABのプロジェクトに関わり始める。数年前から人事部で企画グループ長を務めている。

KX-LABのプログラム企画にも活かされている北野さんの留学時の気づきについて、掘り下げてご紹介していきます!

●留学で海外市場のダイナミズムを直に感じる
私が海外留学しMBAを取得したのは40歳を少し過ぎた時。若い頃からビジネスに関する幅広い知識を身につけたいという思いはあったのですが、共働きで子育てに追われ機会を逸していて…。子どもが小学校にあがり少し余裕ができそうなタイミングで、妻とも相談し思い切ってチャレンジしました。
2012年から翌年まで、アメリカ・ミシガン大学の「グローバルMBA」というプログラムで学びました。最初の3ヶ月間は韓国・中国・日本に滞在し、アジア各国から集まったクラスメイトと2週間おきに1科目ずつ必須科目を履修しました。講義の合間には現地企業も見学。短期間ですが実際に各国に住んだことで、アジアの企業の凄まじい成長ぶりやマーケットとしての可能性等を体感しました。
その後約1年間、大学のキャンパスがあるアメリカ中西部の街に滞在しました。このあたりはラストベルト(錆びた地帯)と呼ばれ、数十年前に現地の重厚長大型の産業が日本企業の攻勢にさらされたところでもあります。工場跡などの痛々しい姿も目にしました。しかしアメリカでは企業の新陳代謝が激しく、大学をハブにして新たな産業が勃興している様子も目の当たりにしました。
また、韓国企業、中国企業が押し寄せてきて、日本企業のプレゼンスはどんどん減ってきている。そのような産業や市場のダイナミズムは、それまで国内市場だけしか経験していなかった自分にとって、強烈にインパクトが大きく、いろいろと考えさせられました。
●留学中に感じたこと 日本人は自分のポテンシャルを知らないのではないか
そのほかに留学中に感じたのは、日本人は自分のポテンシャルを知らない、もしくは自ら客観視できないために、潜在能力を十分発揮できていないのではないか、ということです。
ビジネススクールでは、ビジネスに関する基本的なセオリーやフレームワークを、膨大な量のケーススタディを通じて会得します。多様なバックグラウンドを持つ人材が集まり、チームを組んで取り組んでいくので、共通言語が不可欠になります。
日本企業はOJTが盛んですし、OJTは絶対に必要なものだと思います。ただ、過度にOJTを重視すると、その企業固有の言葉・知識・文化だけが価値判断の基準になってしまい、社外の方とコラボレーションするのが苦手、という事態を招いてしまっているのかもしれないと思いました。
せっかく、様々な経験、知識・スキルを身につけている、つまりビジネスパーソンとしてのポテンシャルはあるのに、それを客観視できていないがゆえに十分にそのポテンシャルが発揮されていないのはもったいないなと感じました。
また、帰国後、戦略を立案する部署に配属されたのですが、どんな戦略を立てても、実行するのはヒトなんですよね。最近流行りの言葉になりますが、いわゆる「人的資本」に着目する必要性があるのでは、とも感じました。
こういった課題感が、KX-LABを含む今の仕事につながっているかと思います。