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女性活躍の「なぜ進まない?」をひも解く~元女性執行役員のリアルな声と「8つの切り口」から考える~(前編)

イベント

2026.5.3


男女雇用機会均等法の施行から約40年、女性活躍推進法の施行から約10年が経過しました。
女性管理職の数は確実に増えていますが、それでもなお「目に見えない壁」や「不自由さ」を感じている方は少なくありません。

そこで日本マンパワーでは、女性が仕事でもっと自由に力を発揮するための手がかりを探るべく、今回のセミナーを企画しました。
山野楽器で女性初の執行役員を務められた須永由美子さんをお迎えし、ご自身の実体験をもとに、女性活躍の現状と課題についてお話しいただきます。

後編は下記からご覧いただけます。※別ページに遷移します。

登壇者プロフィール

【イベントゲスト】須永 由美子さん

オフィスアンダンテ合同会社代表
社会構想大学院大学非常勤講師
元・山野楽器執行役員広報宣伝部長


●1985年、同志社大学法学部卒業後、株式会社西武百貨店に入社。販売促進、宣伝広報、カルチャースクール企画などを担当。
●2007年、株式会社山野楽器に転職し、デジタルマーケティング室の立ち上げ・広報部門の創設を主導。
同社初の女性課長・女性部長・女性執行役員として宣伝広報全般を統括。
●2022年に定年退職後、広報・PRおよびマーケティングコンサルタントとして独立。
●2023年、オフィスアンダンテ合同会社を設立し代表に就任。
●2025年より社会人向け専門職大学院である社会構想大学院大学にて、インターナル・コミュニケーションの講義を担当。

主な資格・所属:コミュニケーションデザイン修士(専門職)、PRSJ認定PRプランナー、
社会教育士(文部科学省)、システムアドミニストレーター など

1女性活躍の「なぜ進まない?」をひも解く~これまでのキャリアを振り返って~ 登壇:須永由美子さん

(1) 「順風満帆」に見えるキャリアの実際

須永さん(以下敬称略):皆さん、こんにちは。本日は約90分、皆さんと一緒に考える時間にできればと思っています。

まず、私のキャリアを簡単に振り返ってみます。

 

 

西武百貨店に入社し、山野楽器に転職。女性初の課長・部長・執行役員を経験し、定年後に起業、大学院でも教えるようになりました。経歴だけを見ると、キラキラほどではありませんが、ほぼ一直線の成功に見えるかもしれません。

 

しかし実際は、紆余曲折の連続です。

 

 

就職活動では苦戦し、出産後には役職を外され、不本意な異動も経験しました。キャリアは決して直線ではなく、でこぼこだったというのが実感です。

それでも振り返ると、「逆境のときこそ学べる時間」だったと感じています。下り坂の時期でも、学び続けていたことが、後になって必ず役に立ちました。

 

(2) 均等法施行前夜の就職活動と、その後

須永:私が就職した当時は、男女雇用機会均等法の施行前で、四年制大学卒の女性を積極的に採用する企業は多くありませんでした。
当時、女性活躍に力を入れていた企業の一つであった西武百貨店には入社できましたが、それでも時代的な背景もあり、今振り返ると、当時の女性社員の役割やキャリアパスには、出産や育児に関しては制約が残っていたように思います。

 

実際に、出産後、短時間勤務を選択したことで、担当業務や役職を外れる経験もしました。いわゆる「マミートラック」です。

仕事への思いと現実との間で葛藤する日々が続きましたが、そんな中で山野楽器から声をかけていただき、転職を決断しました。

(3) 山野楽器で突き当たった壁と再挑戦

須永:山野楽器に転職したのは2007年。

デジタル化が進む時代を見据え、デジタルマーケティングや広報の強化を提案し、部署を立ち上げました。
ところが、上席役員と意見が対立し、部署は解体、私自身も降格となります。不本意な役割に就くことになり、再び悩む時期が続きました。

 

それでも諦めず、会社にとって必要だと信じた提案を続けました。

その結果、再び部署を立ち上げ、最終的には執行役員を務めることになりました。
遠回りではありましたが、この経験が今の自分につながっていると感じています。

(4) 逆境を力に変えた、5つのポイント

須永:こうした経験を振り返り、私なりに整理したのが次の5つです。

1つ目は、逆境の中での準備です。
時間ができたときこそ学びのチャンス。専門性だけでなく、IT、労務、マーケティング、ファイナンスなど、幅広く学んだことが後で生きました。

 

2つ目は、頑張りすぎないこと。
竹や柳のような「しなやかさ」を意識し、人に頼ることも力だと考えるようになりました。

 

3つ目は、チャンスを逃さない決断力
準備をしているからこそ、目の前の転機に気づけるのだと思います。

 

4つ目は、視座を高く持つこと
「一つ上の役職ならどう判断するか」を常に考えて行動してきました。

 

5つ目は、周囲の声を取捨選択すること
すべての助言が自分にとってプラスとは限りません。自分を前に進める声を選ぶことも大切です。

(5) 望ましい4つのサポート

須永:これまでの経験から、個人的な意見ではありますが、組織にあると良いなと思うサポートを4つにまとめました。

①公正な登用と評価の運用―「女性だけに踏み絵をさせない」仕組み

登用や評価は、男女にかかわらず公正であってほしいと強く思います。
私自身、「お子さんはまだ小学生なのに大丈夫?」「残業できるの?」「出張には行ける?」といった問いを、幾度となく投げかけられてきました。
以前より減ってきているとは思いますが、今もなお一部の企業では意識が十分に浸透していないと感じる場面があります。

 

管理職比率などの現実を見ると、育成や機会提供の面で、女性に対する一定の支援はまだまだ必要だと思っています。

ただし、登用において先ほど述べたような踏み絵を踏ませること、また、評価において「女性だから」と下駄を履かせすぎることは、周囲の反感を招き、本人のモチベーションを下げてしまうことにも繋がります。支援と登用・評価は切り分けた運用が望ましいと思います。

②キャリア機会の越境設計・ジョブローテーション― 専門家にとどまらせないキャリア設計

「女性は専門家になりなさい」というアドバイスをよく耳にします。専門性が重要なのは間違いありませんが、専門家のままだと、役職が部門長クラスで止まってしまいがちです。役員になるためには、より幅広い視座が得られる経験が求められます

私自身、若い時期に経営管理や労組活動などを経験させてもらったことが、後になって大きく役立ちました。

そのため、ジョブローテーションや越境の設計も重要ではないかと思っています。

③ 心理的安全性と孤立防止― 「一人ぼっち」にしない仕組み

山野楽器の社内には、私と同じ立場の女性がいませんでした。正直に言って、「一人ぼっち」でした。
そのときの支えになったのが、業界団体や専門家のネットワークです。

他社の先輩女性管理職と悩みを共有できる場は、精神的に本当に大きな支えでした。

 

社内外のメンターや業界コミュニティへの参加を、個人任せにせず、組織として後押しする仕組みがあれば、孤立はかなり防げるのではないかと思います。

④逆境時のフォローアップ― 昇格よりも、むしろ「降格」のときこそ

昇格したときには多くのアドバイスをいただけるものですが、降格したときのフォローは薄いもの。

降格した人は、いつの間にか周囲から距離を置かれがちです。私にとっても、それが一番辛かったです。

 

でも、降格したからといって、その人が本来持つ能力を失ったわけではありません。

また機会を得られれば、力を発揮する可能性は十分にあります。

逆境のときこそ、人事や役員が意識的に関わり、フォローする仕組みがあったら、従業員がどれだけ救われるだろうかと思います。

(6) 企業文化の「しなやかさ」とRAFGAモデル

手前味噌で恐縮ですが、大学院での研究を通じて、企業が持続的に成長するためには、理念を軸にしながら、変化にしなやかに対応する力が重要だと考えるようになりました。

復元力・適応力・融通性・度量・自立性の5要素をRAFGAモデルとして整理しています。

 

出典:須永由美子「長寿企業にみる『企業理念』と『企業文化』の関係についての考察―「しなやかさ」は企業の永続性を担保する知恵―」社会構想研究(2023)

 

よく「レジリエンス(復元力)が大事だ」と言われますが、それだけでは十分ではないと思っています。

新しいものに順応する力、そして計画通りにいかない時に機動的に動ける力。既成概念に囚われすぎない鷹揚さ、いわば「鈍感力」のようなものも必要です。さらに、自分で考えて自分で動く自律性も欠かせません。

 

この考え方は、企業への提言として書いたものですが、実は個人のキャリアにも通じるものだと思っています。

強いだけではなく、竹や柳のように何度倒れてもまた持ち上げられるような柔らかさを持つこと。世の中、順風満帆なキャリアを歩む人の方が少数派です。

逆境の時、折れずにもう一度立ち上がれるしなやかさこそが、私たちのキャリアに必要ではないかと考えています。

(7) 女性リーダーとしての変革の進め方

今は「管理職は罰ゲーム」などと言われ、管理職になることに躊躇する人が増えています。

これは女性に限った話ではありません。

 

そうした方に、「今はできないことも、立場が変わればできるようになる」と伝える機会があれば、見え方は少し変わるのではないかと思っています。
人は、好奇心があった方が楽しく、できることが増えるほど生きがいも生まれます

キャリアの中で自分のテリトリーを少しずつ広げていくことも、その一つです。

 

また、私自身が変革を進めるうえで一番意識してきたのは、「巻き込むこと」「仲間をつくること」でした。

正直に申し上げれば、上長に常に恵まれていたとは言いがたいのですが(笑)、部下や後輩には本当に支えられてきました。

それが私の一番のバックアップ、救いになりました。

 

役員会などでは反対意見が出ることを想定し、できるだけ事前に理解者を増やすよう努めてきました。

派閥をつくるということではなく、何かを成し遂げよう、進めようとする時には、賛同してくれる仲間をどれだけ増やせるかが大切だと思っています。

それは家庭やプライベートの場面でも同じです。

家庭の事情で早退が必要なときには、黙って抱え込むのではなく、正直に事情を伝え、理解を求めるようにしていました。

その方が結果として協力者が増え、本当に助けられました。

 

以上で、私からのお話を終わります。何かご参考になる部分があれば幸いです。

ご清聴ありがとうございました!

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